消費者のより近くへ
小売業はそれを実現するための手段
◆財布のなかでのシェアが変化した
――松岡さんは、最近の小売業について、一般に言われているように「消費が低迷してから苦しくなっている」のではなく「消費構造の変化に対応していないからだ」と指摘されていますね。
松岡 この20年くらいの日本の消費動向を総務省の「家計調査」でみると消費支出は落ちていません。つまり財布の中身は大きく変わっていませんが、その財布の中でシェアをみると、アパレル(衣料)に対してお金を使わなくなって、4割以上減っています。食品も1割くらい減っています。一方では、保健医療や通信費が伸びています(図1)。
そして過去20年間所得はほとんど伸びていないので、新商品が出てくると、みんなが新商品を買うようになり、衣料のような必需品がしわ寄せを受けてきています。
最近は「もの」から「こと」へといわれますが、「こと」つまり「サービス」の家計支出に占める割合が80年代は48%でしたがいまは55%くらいを占めています。その結果、百貨店や量販店など「もの」をメインにしている小売業が厳しくなってきています。
◆単身世帯の増加で「もの」から「こと」へ
――そうした構造的は変化が起きてきた要因はなんですか。
松岡 日本の社会は大家族から核家族化することで、新しい世帯ができ家電商品などが売れましたが、95年ころを境に単身世帯が増えてきていますし、核家族自体も減りつつあるので、2020年には単身世帯が全世帯の17%を超えると予測されています。
単身世帯では2人以上世帯に比べて「サービス支出」の割合が大きいので、「もの」への支出が下がります。
(続きは 【クローズアップフードビジネス】「農産物販売と小売業界」 で)