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「社会的経済」に向けて協同組合の道しるべを探る 農中総研が2012国際協同組合年記念シンポ

 (株)農林中金総合研究所は2012国際協同組合年を記念し「共生する社会を目指して」をテーマにしたシンポジウムを4月17日、帝国ホテル東京で開いた。

ビクター・ペストフ氏 シンポジウムの副題は「重要性を増す『社会的経済』の役割と協同組合への期待」。元ストックホルム大学政治学教授のビクター・ペストフ氏と経済評論家の内橋克人氏が基調講演し、財政問題や格差社会が深刻化するなかで注目される「社会的経済」(市民が共同して取り組むさまざまな経済活動のこと。欧州での総称)についての考えを深めた。
 講演ではペストフ氏が「協同組合および社会的企業」をテーマに「社会的経済」について説明した。一方、内橋氏からは「社会的経済」が持つ言葉のあいまいさを協同組合としてどう乗り越えていくのか、協同組合がその一役を担うための具体的なビジョンはあるのか―といった問題が提起された。
内橋克人氏 内橋氏は資本主義のなかで人々の不満を和らげる一種の緩衝材として生まれたのが「社会的経済」の考えであり、それが逆に資本主義を延命させる役割になってしまっているのではないかとの矛盾を述べ、「社会的経済」を定義づけるだけでなく、原発やTPP、格差貧困など直面する問題にいかに真正面から向き合い、どういう答えを出すかが協同組合には問われていると強調。「資本主義によるダメージの受け皿としての協同組合となってよいのか、その答えこそ協同組合の新しい道しるべになる」と述べた。

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上:ビクター・ペストフ氏
下:内橋克人氏


◆協同組合だからこそできる役割の発信を

シンポジウムには約300人が参加 その後は「社会的経済」が国家、市場、地域社会とどう関わっていくかについて東洋大学教授の今村肇氏をコーディネーターに生協総合研究所理事の栗本昭氏と農中総研特別理事の蔦谷栄一氏も交えてパネルディスカッションを行った。
 蔦谷氏は行政と農協が地域営農に取り組む事例が各地で見られることや介護や福祉事業など地域の暮らしに対する課題が増すなかで、とくに地方自治体と一体化した動きをより広めていくことが今の協同組合にとっての大きな課題だと述べた。
 内橋氏は地域循環型社会の重要性を強調したうえで、「廃棄物ゼロエミッション」(ある産業の廃棄物を別の産業の材料として活用するサイクルでの廃棄物ゼロの取り組み)を成功できたのは協同組合間による提携のみで、「企業間での提携に成功事例はない」として、これらを成功できる組織、原理とは何かを社会に示していく必要性を強調した。


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シンポジウムには約300人が参加

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