交流会では毎日新聞社経済部編集委員の行友弥氏が「TPP〜その隠れた本質と行方を探る」と題して基調講演し、TPPの特徴や日本にTPPが急浮上した背景、TPPの本質などを説明。
戦後の日米協議のなかで日本の言い分が米国側に通ったことはないことからもTPP交渉参加後の離脱などあり得ないとして、政府は慎重に考えるべきであり、TPP問題をきっかけに日本の生産や消費のあり方を含めて国民的議論を深めてもらいたいと考えを述べた。
◆世界情勢からもおろかな選択―全中
その後JA全中、日本生協連、日本医療福祉生協連の3団体がTPPについての考えを表明した。
JA全中からは小林寛史農政部長が輸入自由化による影響について1964年の大豆・木材の関税撤廃を事例に挙げ、いまだ大豆の国内生産は厳しい状態にあることや国内林業が衰えたことで鳥獣被害や限界集落が増加したことなど、現代社会に取り返しのつかない問題をもたらしたと訴えた。
またTPPによって日本農業が壊滅し、食料を輸入することになれば他国の食料がなくなり国際価格は高騰、その消費行動によって誰に迷惑がかかるかといったことも考えるべきであり、「世界人口70億人の9億人が飢餓人口でそのうちもっとも多いのがアジア。日本のTPP参加は極めておろかな選択になる」と述べた。
そのほかにも、これまで積み上げてきた日本の農業モデルの崩壊や国境地帯の暮らし、医療など様々な問題がはらんでいることへの理解を広く国民に求めたいとした。
◆議論の場づくりに努める―日生協
日本生協連からは政策企画部の板谷伸彦氏が考えを述べた。
日本生協連はこれまでTPPについて明確な立場を示していないが、今年度の活動方針を決めるにあたり全国の会員生協で論議を経てきた方針案のなかで様々な見方のあるテーマのTPPについては「客観的・多角的な視点から情報収集と提供に努め、地域における学びあいの場づくりに力を尽くす」というのが考えであるとした。
これに対して参加者からは「多様な意見を尊重するのは大事なことだが、TPPはどういう問題があるのかという中身について触れられていない」として、議論を起こすならば様々ある意見とは具体的にどういうものなのか議論するための内容について問題提起する必要があるのでは、との発言があった。
◆国民皆保険制度の崩壊招く―日本医療福祉生協連
日本医療福祉生協連の高橋泰行会長理事は国民医療、国民皆保険制度を守るためにTPP参加には反対であるとの考えを述べた。
TPPへの参加が混合診療や株式会社の参入など医療の営利化をもたらし、それが医療の質を低下させ、不採算の科目や地域から医療が撤退するといった事態をもたらすなどとして、たとえ医療分野が交渉から外れることがあっても反対の立場であることを強調した。
行友氏も国内に医療を成長産業にしていこうとの動きがあることや公的医療費を狭める目的としてTPP参加をメリットと考える発想があることなど、国内でも皆保険制度を弱体化させていく動きが見えつつあるのではないかと指摘した。