◆反対多数の現実ふまえ
民主党の経済連携PTの方針は、TPP参加問題だけに焦点を絞らず、日中韓、日豪、ASEAN+3(日・中・韓)なども含めて「基本戦略」を改めて議論することにしたものだ。
TPPについては昨年秋、党PTがハワイAPECに向けて▽懸念事項に対する事実確認と情報収集、▽国民への十分な情報提供を政府に求めた。それを受けて野田首相は、交渉参加に向けた関係国との協議入りを表明したものの、情報収集と提供、国民的議論を経たうえで参加判断するとした。
その後、政府は関係国と事前協議を始めたが、これまでの政府からの情報では、食品安全や医療、米韓FTAに盛り込まれている毒素条項など懸念事項について十分な説明が得られていないとPTは意見集約。また、TPPをテーマにした地域シンポジウムでも情報収集の不十分さや参加反対の声が多数を占めたことをふまえ、TPPについては「国民の間の十分な議論、合意形成が図られている段階に達していない」と結論づけた。
そのうえで党内や国民の間で議論が割れている理由は「経済連携から何を得ようとしているのか、何を守っていくのか、具体的な戦略や対策を明確にしていない」からだとして経済連携を行うにあたっての「基本戦略」を議論することにした。
今後の議論の論点は[1]日中韓、日豪、日欧、ASEAN+3、TPPなど実現可能性のある経済連携についての基本戦略、[2]ルールメイキングについての戦略、[3]経済連携協定の自由化度についての戦略、[4]センシティブ品目についての戦略、[5]国内制度への影響に対する対応、戦略の5点。
11日までは連日総会を開き、まず?に示された個別の協定を視野に経済連携協定の「大方針」についての意見集約をめざすという。
この日の総会では経済連携について「アジアのなかの日本をどう考えるべきか」、「WTO(世界貿易機関)交渉を中心にすべき」といった意見のほか、「内需拡大を優先させるべき」といった指摘も出た。
◆政府の判断にどう反映?
櫻井充・経済連携PT座長は総会の冒頭、「わが国としてどういう方向性を持って経済連携をしていくべきなのか。(経済連携をするなら)どういう枠組みでやっていくべきなのか。この骨格が決まらないといくら議論をしても進んでいかない」と話し、とくにPT代表団による4月のカナダ訪問でカナダ政府は酪農を守ることなどを明確にし交渉に臨む方針を示していたことに触れ「国としてどういう戦略を持ってやっていくのか。この当たり前のことをもう一度確認する必要があるのではないか」と強調した。
また、国会会期末の6月21日までに一定の結論を得ることにしたのは、「何かがあるからそこで(議論を)切るようなことはしない。ただ、一方で与党としていつまでも結論を出さないわけにはいかない」(櫻井座長)との考えのなか、7日の役員会で国会が閉会すれば実質的に議論がストップするため会期中に集約していく方針が合意されたという。
事務局長代理の佐々木隆博衆院議員は今後について「この国になかったことを議論する。結構大変な作業」と話した。短期間にわが国の経済のあり方と経済連携についてどこまで掘り下げて議論ができるか不透明だが、記者レクに臨んだ佐々木氏の上着には「NO TPP」のバッジ。
一方、4月30日の日米首脳会談で野田首相とオバマ大統領は、日米間協議を前進させるようお互い努力することで一致した。党の結論を待たずに政府が事前協議を進めTPP参加判断をする懸念は依然払しょくできないが、佐々木氏は「政府には党の論議を参酌していただけるべきだと思う」と強調した。