◆含み損から含み益へ
23年度の経常収益は前期比▲1379億円の9331億円で減収となった。
米国国債の長期金利がこの1年で3%後半から2%を割り込むまでに低下したため、年6〜7兆円にもなる償還分の再投資による利息収益が減少したことや、為替リスクのヘッジ目的での外貨運用のためのドル調達金利が欧州債務危機で上昇、それがコスト増となったことなどが要因だという。
ただ、資金調達コストは増加したものの、国債等債券の売却損は前期比▲1499億円となるなど、経常費用は前期比▲890億円の8647億円となったことから経常利益は目標水準内の684億円となった。純利益は616億円。
有価証券の評価損は昨年3月末では▲3429億円だった。それが内外長期金利の低下で債券、外国債券、投資信託等の評価差額が改善したことや、ポートフォリオの内容改善を行ったことなどから、前期より+8472億円も改善し、今期は5042億円の評価益となった。5年ぶりに評価損から評価益に転じた。
純資産も有価証券評価差額の改善と純利益の積み上げで前期比+5700億円の4兆8204億円となった。
◆自己資本比率24.83%
この結果、自己資本比率は前期比2.07%上昇し24.83%となった。基本的項目(Tier1)比率は同1.42%上昇し、18.22%となった。
今期の決算では国債等の債券売却益は前期比▲449億円の249億円となったが、これは有価証券の評価益が5000億円を超えたことを考慮したもの。売却すれば利益はさらに出るものの、その分の利息収益はなくなることから「単年度で収益を上げるよりも今年度以降の対応をふまえて決算した」と河野良雄理事長は説明、「不安定な市場環境に留意した財務運営を継続したことで財務体質は一層強化された」と話した。
そのうえで24年度については「欧州債務問題を中心に先行きは不透明感が強く金融市場も不安定な状況が継続すると想定している。引き続き経常利益500〜1000億円を目標に適切なリスク管理のもと幅広く収益機会を捉え中期的な収益力の強化に努めていく」との方針を示した。
具体的には国際分散投資を基本とするものの、アジアへの投資、欧州のなかでも堅調な英国、フランス、ドイツへの投資を増やしていく考えを示した。また、昨年は210億円の配当を実施したが、今期も「昨年並み」の配当を行う方針であることを話した。最終的には6月の総代会で決定する。
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