戸別所得補償制度
大規模経営を「下支え」 水田経営の高度化も進む
◆集落営農、高い加入率
今回は2010年度に実施された戸別所得補償モデル対策の加入状況を聞いた。(以下、米戸別所得補償モデル対策を「米モデル対策」、水田利活用自給力向上対策を「水田利活用対策」と表記)。
表1は経営形態別の米モデル対策への加入状況。法人経営全体の加入率は82.7%と非法人経営の66.7%を上回っている。その法人経営のうちでも集落営農組織が含まれる農事組合法人がもっとも高く89.4%だった。
一方、水田利活用対策の加入率(表2)は、米モデル対策にくらべ低く全体で68.1%となった。米モデル対策は生産数量目標に即して米の生産をするのが条件だが、この対策への加入率の高さが示された。
また、水田利活用対策でも法人経営の加入率のほうが高く、とくに農事組合法人が積極的に加入している結果となった。この結果から、地域との密着度の高い集落営農組織を含む農事組合法人がもっとも積極的に戸別所得補償制度に参加していることが示された。
同時に2つの対策ともに、法人経営のなかでも有限会社より株式会社が高いことから谷口教授は「企業的性格の深化にともない、戸別所得補償制度に積極的に対応している姿が浮かびあがってきた」と指摘した。
経営面積規模別に分析した加入状況をみると、規模が大きくなるほど加入率が高くなる傾向が明確に示された(表3)。そのなかでも30ha以上層では90%以上となっている一方、10〜30ha層は80%台、5〜10ha層は60%台、5ha未満層は50%未満という「加入率の段差」が見られた。
この結果から、「米モデル対策は大規模化や法人化のよきパートナーの役割を果たしているのではないか」と谷口教授は指摘する。
【本調査の実施方法】
2011年10月に(社)農協協会から対象農家・法人にアンケート票を郵送。12月末までに回収を終了した。対象はこれまでの調査に協力を得てきた大規模農家・法人を中心に新たに把握した経営体。今回、分析の対象とすることができた回答は347法人と62の大規模農家の合計409。
分析は谷口信和・東大大学院農学生命科学研究科教授(現在は東京農業大学教授)と李侖美・(財)日本農業研究所研究員が行った。