◆政府の責任が「前提」
「考え方」は5月18日まで実施したJAグループ各段階での意見集約をもとに決めた。 水田農業政策の「大前提」となるべき政策として提起したのは「政府の責任による米の需給と価格の安定に向けた対策」だ。
現行の米政策は豊作による生産過剰分を買い入れる集荷円滑化対策など「出口対策」を行わず、米価下落を容認する制度となっている。
戸別所得補償制度は計画生産実施者が対象だが、米は1年1作で長期保存が可能であり、豊凶変動に加え、需要が減少傾向にあるなかでは潜在的に需給ギャップがあるといえる。
そのためほとんどの生産者が計画生産を実施していながらも、一部の非実施者のために、多くの実施者が米価下落と翌年の生産数量目標の削減という不利益を被っている。また、戸別所得補償制度では米価が標準的な販売価格よりも下落した場合は米価変動補てん交付金が交付されることになっているが、22年産米に対しては1500億円を超える財政負担となった。
こうした点をJAグループは指摘し「政策の前提として、政府の責任による米の需給と価格に向けた対策が必要」だとの考えを強調している。
具体的には▽出来秋以降の政府買入れの実施、▽現在、年20万tの政府備蓄米買入れを需給状況をふまえた買入れとする、などの政府備蓄米買入れ制度の見直しを求めていく。
また、米の計画生産の実施をすべての政策の要件として位置づけるほか、転作作物と地域振興作物の所得水準を主食用米以上に引き上げることなども求めていく。
◆地域・品目ごとの経営安定対策を
このような政策を前提にし、現行の戸別所得補償制度については、▽すべての農地に対して直接支払いを行う「基礎支払い」、▽地域・品目ごとの取り組み実態に応じて上乗せで支払う「加算払い」を組み合わせて「新たな直接支払制度」が必要であると提起している。
そのうえで戸別所得補償制度の米の定額支払い部分を食料自給率の確保と農業の多面的機能の価値を評価した「基礎支払い」として位置づけることが必要だとした。ただ、これも米の需給と価格の安定に向けた対策が前提となるものであることから、「当面は、実態をふまえ、計画生産実施者を対象に、米の販売価格と生産費の差を補てんする岩盤対策となる全国一律の支払いとして引き続き措置する必要がある」とした。
同時に変動交付金については、全国一律支払いからの見直しを提起した。
全国一律で補てんする仕組みでは、地域によって異なる米価の下落率に対応できず、高米価・高単収地帯ほど所得補てんが不十分となる。さらに財源が限られているなか大幅な米価下落によって財政負担が拡大すれば、農地集積や設備等の更新などにも支障を来たしかなねないことになる。
こうしたことから、変動交付金は、地域・品目ごとの収入減少に対する経営安定対策へと見直す必要があるというのがJAグループの考え方。具体的には、予期せぬ収入減少を緩和するため、地域の担い手経営体が自らの判断で一定の拠出を行うことを前提にした交付金の仕組みづくりを提起している。
そのほか、「加算支払い」の仕組みについては、地域の裁量権を大幅に拡大し、自給率の向上や水田所得の増大、農地集積等が実現するような地域ごとの柔軟なメニューや交付単価が設定できる仕組みとする必要があることも提起している。
JAグループはこの「考え方」をもとに、政策実現に向け政府・与党に働きかけを強めていく。