全国森林組合連合会の佐藤重芳会長は開会のあいさつで「国際協同組合年を機会に協同組合としての森林組合のあり方を再考しながら広く生産者と消費者が連携し、森林・林業の再生に向けた取り組みを一層促進していきたい。今回のセミナーが森林・林業・山村再生実現の一助となることを期待している」と述べた。
また、農林中央金庫の河野良雄理事長は昨年度の「森林法」や「森林・林業基本計画」改定、今年度からは森林経営計画の策定が求められるなど「再生プラン」が本格実施の段階に入っているとして一層の理解と着実な取り組みを求めたほか、FRONT80の助成件数や応募件数が過去に比べて増えていることから助成を通じて森林再生への取り組みを後押ししていきたいと話した。
来賓の皆川芳嗣林野庁長官は、「森林林業再生プラン」の成功には明確な成功イメージを描くことが必要だとして、「これからの時代は資源的な問題やCO2の削減という課題などから木への回帰に社会全体が向かわざるをえず、森林林業の再生は不可欠であり必ずや達成できる」と述べ、国の制度を活用した地域での取り組みを求めるとともに、それらの取り組みを支援していくことで木材需要の拡大を図っていきたいなどと語った。
◆地域資源に責任をもって
1日目は森林・林業再生プラン実行委員会座長の岡田秀二岩手大学農学部教授(写真)が「『森林・林業再生プラン』を読み解く〜森林組合の取り組み」と題して講演し、このプランが社会経済の抜本改正であるとして、組合のリーダーはこの認識の下に意識改革していくことが必要だと強調した。
プランは「コンクリート社会から木の社会へ」を理念に掲げ低炭素・循環型社会経済を目標としている。岡田教授は「現在、情報や機能など形のないものがサービスを持つ社会になってきた。それを考えると機能を持った木材製品の開発は大きなポテンシャルになり、山村は価値形成の現場になる」と森林への可能性を期待し、木材需要拡大のためには現在過剰となっている住宅資材としてだけでなく、プラスチックやスチール、化繊製品など、今の原料を木材に「置き換え」た提案をしていくことが今後必要であると指摘した。
また、今後森林組合に求められることは自治体や私経済と協同しつつもそれに埋没せず、地域資源に責任を持つことだと強調。「これまで国、マーケットどちらに頼ってもよい社会は実現できず、今こそ『共』の領域を担う協同組合への期待は大きい」として、その期待と現実のギャップを埋めるために生産者・事業者・消費者の論理にたった組合につくりかえていってほしいと呼びかけた。
その後23年度のFRONT80助成先である▽北信州森林組合(長野)▽NPO法人杣の杜学舎(岐阜)▽中勢森林組合(三重)▽吉野林業協同組合(奈良)▽熊本県森林組合連合会(熊本)▽曽於地区森林組合(鹿児島)の6団体が事業成果を発表し、2日目は「人材育成による地域森林管理」をテーマに施行集約化先進組合である多野東部森林組合の新井和子代表理事組合長と、「我が国合板産業の現状と国産材への期待」をテーマに日本合板工業組合連合会の井上篤博会長による講演があった。