白石(筆者)は“農協運動の基本課題と革新方向”について特に営農経済面、生活福祉面に加えて地域社会開発面(再生可能エネルギー事業を含む)を農協事業の基本柱として明確にすること、国際協同組合年を画期として生協・漁協・森林組合等との協同組合間提携の本格的な展開、准組合員の運営面への部分的参画を可能とする実態先行型の戦略的な取り組み(正・准共同参画型の集落組織活動、女性部活動等)を基礎として農協法の見直し方向等を提起した。全国農協中央会の馬場利彦参事は“第26回JA全国大会決議の意義と展開方向”について次代につなぐ農協運動の10年後のビジョンと支店重視の具体的展開方向を明らかにした。
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共同研究を行っている越後さんとう農協営農部の田中忠政氏と東京農業大学の鈴木充夫教授は、“越後さんとう農協における衛星画像・GISを活用した次代につなぐ農業支援システムと米ブランド化の現状と革新方向”について、圃場を視覚的に把握するためのGIS機能によって圃場管理、生産管理が簡単にできる新たな仕組みを開発中であり、特にGAP、生産履歴管理及びトレーサビリティとの連携でデータ管理が可能となり、低コストで高品質な農産物生産(「越後の華」米ブランドの確立、酒造好適米の区分集荷の実施)を実現し、新しい担い手育成に寄与しつつある実態を報告した。
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岩手県農協中央会の田沼征彦会長は“東日本大震災のかかるJAいわてグループの復旧・復興の取り組み”について、JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策岩手県協議会から東京電力に111億5千2百万円の損害賠償請求を行っているが9月末時点の賠償金支払額が69億5百万円に留まっている問題等を具体的に報告した。
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新岩手農協の久保 憲雄代表理事専務は"震災復興活動と営農経済事業における地域ブランド化志向の販売戦略"について、正組合員23,330人のうち販売金額1千万以上の組合員はわずか2.8%(663人)にすぎないが、販売額全体(400億円)の52%を占めるなど正組合員構成の二極分化の進行やアンブレラ・ブランドの確立(複数品目を包含したブランド化の確立)方向の重要性を提言した。
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総括的コメントはJC総合研究所の松岡公明理事が第26回JA全国大会決議における「次代につなぐ協同」について“次代”“つなぐ”“協同”の3つキーワードに区分して深く検討する必要があり、ムードに流されないようにすべきだと重要な指摘等を行った。
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東京農工大学の梶井功名誉教授は、准組合員問題の掘り下げた検討と1970年の全国農協大会での「生活基本構想の決議」の再評価を提起し、その後参加者との活発な論議が展開された。