◆理念をいかに実現するか
吉永専務から、まず、「経済事業の課題」として戦後の食管制度下における事業から高度成長期、安定成長期を経て現在までの経済事業の経過について報告があった。そこではこれまでの特徴を集約し、経済事業も時代に応じて変遷しているが、現在の規制緩和と市場主義が強まる状況においては共販、予約積み上げなどの従来の事業方式にも矛盾がみられるようになっているとした問題提起があった。
そして他事業に比較して経済事業では対応が遅れており、今後は組合員のニーズの変化に十分に応えていくことが必要とされた。
第2の「統合全農の課題と対応方向」では、最初に全農のスタンスについて報告があった。
まず、政策課題への対応ではJA全中が主体であるが、事業連としても政策(例えばTPP問題)に関するシュミレーションが必要なこと、また、経済事業としては販売事業が基本であるが収益では購買事業が柱となっているジレンマについても述べられた。
さらに統合についての報告では、平成20年頃までは旧経済連の自主性を尊重することを重視していたが、それでは統一体としての運営が困難となるので、最近では県本部とJA全農本部および県本部相互の人事異動もめざすという。そしてこうした対応は、統合後新しい経営者層が増加しているので可能であり、併せてこれからのJA全農の経営理念として「生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋」の機能が強調された。
◆会員の意思統一、不可欠
第3では「東日本大震災で強固になった農協運動」について実例に基づいた報告があった。農協、県本部が被災地を毎日訪問するなどの「初動対応」で大きな役割を果たしたことをはじめ飼料、石油事業の対応について具体的な報告があった。
しかもこうした活動は全国的な組織活動として展開されたところに農協の重要な特徴があったといわれたことは注目すべきである。その上で自身による視察の体験も含め、被災地の人々が思っていることを政策に如何に反映するかがこれからも重要な課題であるとされた。
第4は「国際協同組合年」に関わることであった。ここでは全国実行委員会常任幹事としての経験を踏まえ、協同組合憲章草案および協同組合基本法制定の動向について報告があった。そして2013年以降も協同組合間提携が重要な課題であるとされたが、この問題にかかわり「協同組合理念は新自由主義(ネオリベラリズム)の対抗軸」であると強調されたことは、協同組合(人)として肝に銘ずべきことである。こうした考えからTPPについても単なる関税問題ではなく「国のあり様の選択」であるとされていることは、今後のTPP反対運動を展開していく上で大切な視点であろう。
こうした報告のあと最後の「まとめ」でとくに強調されたのは、「情報の公開が命」ということであった。具体的な例として手数料のオープン化の意見(生活クラブ河野元会長)についても、複雑な問題ではあるが会員の意思統一を図りながら、「一歩でも二歩でも近づく」ことが今後の課題であるとされたことは注目すべきである。
吉永専務の報告の後質疑が行われたが統合問題、米政策、協同組合方式と株式会社方式問題などについて意見が交わされた。いずれにしてもこの研究会で協議されたことは今後の農協事業にとっても重要な課題であろう。