提言

JAの現場から

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農業の潜在力発揮に一丸となろう!

JAつがる弘前代表理事組合長 西澤 幸清

 近ごろ、新聞やテレビで「地球温暖化」や「京都議定書」といった言葉をよく見たり聞いたりする。
 地球の人口は1年間に8000万人ずつ増えていて、2050年には91億人に達するであろうといわれており、今後地球温暖化問題に対して、JAとしてどのような取組みをしていくかが課題となっている。

◆温暖化水不足日本の食に影響

JAつがる弘前代表理事組合長 西澤 幸清 2004年、日本では観測史上はじめて10回の台風が上陸した。同じく2004年大西洋南部ではこれまで発生したことのないハリケーンがブラジル沖で発生し、陸地を襲った。アメリカでも2004年・2005年ハリケーンにより1300人が死亡する大規模な被害をもたらした。2006年春にはこれまで例のない最大級のサイクロンがオーストラリアを襲っている。地球温暖化によりこういう状況が起きている。
 また、2003年には破壊的な熱波がヨーロッパで起こり3万5000人以上の死者、オーストラリアでは100年に1度の干ばつが2006年・2007年に起きており、100年間に世界の平均温度0.7℃上昇、さらに温暖化が進むと見られる。
 これによって1980年と2006年を比較すると洪水の数は6倍、暴風雨は4倍に増大している。
 私たちは「水はいくらでもある」と思いがちだ。しかし、私たちの利用できる水量は地球全体の水量の0.5%にも満たない。利用できる水の約70%はかんがい用水、残りの30%が工業用水や生活用水として使われている。
 最近の50年で水の使用量は3倍に増大、世界各地で水不足が深刻化しており、急速な人口増や都市化などから、今後20年の水の使用量が少なくとも50%増加すると予測されている。また、水獲得競争の激化でかんがい用水の利用が著しく制約され、食料生産に深刻な悪影響をもたらすと警戒されており、2050年までには4割以上の人が水不足にさらされる予測である。
 日本は、年間降水量が平均1750?と世界平均の2倍で、世界有数の多雨地帯である。よって、世界各地で起きている水不足の問題は、日本人にとって何ら問題の無いように思えるかもしれない。
 しかし、食料自給率39%の我が国は、61%の食料生産に必要な農地と農業用水を諸外国に依存しているということになり、かんがい農業で穀物1トンを生産するためには1000トンの水が必要といわれている中で、日本は食料という形で世界中から大量の水も輸入している。世界で水不足が深刻化すれば、直ちに日本の食に影響が出るのである。

健康維持とミネラルの重要性
 
 また、この30年間で医師数は約10万人から28万人に増加し、医学の進歩も目覚しいものがあるが、年間33兆円もの膨大な医療費がかかっており、病気が減る気配がない。それはなぜか、「食べ物の変化によるものである」とある医師は指摘する。日本人は戦後日本食を忘れ米国追従の食生活に変わって来た。その結果、ミネラル不足になっている。
 人間が生きていく上で必要なミネラルは約20種類ありカルシウムは神経伝達の要になり、集中力を高め落ち着いた判断を下すのに必要で、不足するといらいらしたり冷静な判断が下せなくなる。
 血液中のヘモグロビンの成分の鉄が不足すると、貧血や集中力が無くなり、マグネシウムが不足すると興奮しやすくなり、マンガンが不足すると運動神経の失調や神経障害になりやすく、亜鉛の不足はインスリン構成元素であるので糖尿病になりやすく、銅が不足すると動脈硬化になりやすいといった、いろいろな症状が起きる。
 野菜はビタミン約30種類、ミネラル100種類を含有しており、その不足からくる体調不良に対して、野菜を食べることにより改善できる。
 では、野菜や野草などの植物はなぜ病気に効くのか。それは含有成分であるファイトケミカル(植物性化学物質)によると言われている。植物は生まれてからなくなるまで同じ場所に留まるため、紫外線や有毒性のあるガス、或いは有害な昆虫や小動物の攻撃にあっても逃げも隠れもできない。それ故に、植物は体内にそうした有害物を「解毒」するための物質をみずから産生・保存している。それがファイトケミカルである。

◆「地産地消」で温暖化抑制を
 
 日本型食生活は、ごはんを中心とし魚介類や野菜などと組み合わせやすく、タンパク質や炭水化物、食物繊維に富み、脂肪が比較的少ないバランスの取れた健康食であり、栄養的な観点はもとより、総合的な食料自給率向上の観点からも、日本型食生活を定着させる必要がある。
 また、国内農産物の消費拡大は、輸入品の輸送に伴う二酸化炭素の削減にもつながり、地球温暖化の抑制にもつながる。
 日本での「地産地消」、地元の食べ物の価値と食のあり方を見直す運動を展開し、政府の掲げた基本方針「農林水産業の潜在能力を最大限発揮させ、21世紀の戦略産業に。国民がおいしく安全な食料の安定供給を実現」に全国のJA役職員及び組合員が一緒になり取り組んでいかなければならないと思う。

(2009.06.11)