◆食料自給率の向上に向けて
現在政府は、新たな食料・農業・農村基本計画の策定作業を行っている。JAグループとしても組織討議により決定した基本計画の策定に向けたJAグループの基本的な考え方に基づき、今後、政府・与党に対し働きかけていく。
その中で、国民全体の緊急かつ重要課題であり一番の論点となるのは、食料自給率の向上対策であろう。わが国の食料自給率は、言うまでもなく平成19年度で40%(カロリーベース)と、主要先進国の中で最低水準まで低下している。国内においては、世界的な食料需給の構造的な逼迫への転換に伴う食料品価格の乱高下や輸入食品の安全・安心問題の拡大によって、自給率の低さを危惧する国民が増加している状況である。
そもそも食料自給率の問題は、JAや農業者サイドだけの問題ではなく、国民全体の共通認識であり、国民運動として取り組むべきである。また農林水産省のみならず総務省等が連携し一体となり国家戦略「オールジャパン」として取り組まなければ実現は困難である。オールジャパンで取り組む事により、新たな対策が生まれ、これまでと異なる結果も生じるのではないだろうか。今まさに日本という国の総合力(日本力)の発揮が問われている。
◆JA事業改革の取り組み
一方、JA経営に目を向けると課題は山積しており、すべての事業において、更なる機能強化と合理化・効率化が求められている。また、コンプライアンス態勢やリスク管理の強化などによる内部統制システムの確立、適正な自己査定に基づく引当、自己資本の充実などJA経営基盤の確立が急務となっている。
このような状況の中、当JAではこれまで数々の事業改革に取り組んできた。例えば営農販売事業面では、広域営農指導員・ACSH(アクシュ:営農経済渉外)の設置、パッケージセンターの建設、地区連携乾燥システム(サテライト方式)の構築、金融共済事業では、支所の統廃合、金融共済渉外(複合渉外)の設置等々を行ってきた。
これら事業改革に取り組む上でのキーワードは「JAはが野の総合力の発揮」である。ACSHを例にとれば、組合員との"ふれあい"が少なくなる中で、「待ち」から「攻め」の取り組みの一環として、ACSHが庭先や圃場に出かけ、総合的な営農相談を行うことを目的としている。姿勢と方向性次に示す通りである。「組合員が何を考え、JAに何を求めているのかを把握」→「逃げる組合員、追うJAの構図を打破」→「JAとしての『推進』の姿勢転換を組合員にアピール」→「JAを離れていった組合員やJAを『業者』と考えている組合員を積極的に訪問し絆を深める」→「JA利用の復活と既取引の利用率向上」ACSHはこのように営農経済事業を中心として金融共済事業、経営・税務等一切の相談に応じる、JAの総合対応力を発揮するためのチームなのである。今のところ一定の成果を上げているものと自負している。
◆JAが果たすべき役割
今後、農業・JAを取り巻く環境はますます厳しさを増すことが想定される。当JAにおいても組合員の加入促進が大きな課題である。そのため、総合ポイント制の導入により組合員メリットを明確化し、組合員が満足する事業の提供が不可欠である。また、担い手や新規就農者へ対する支援により正組合員の育成、後継者確保対策も進めていかなければならない。
さらに、事業改革を継続し、組合員の生産額、販売額の増大対策にも取り組んでいかなければならない。その一方、JAは「農」を中心とする協同組合であると同時に、「豊かなくらし」「生活の安定」等地域に根付く協同組合として役割を発揮していくことも大切である。
当JAは「愛・生命(いのち)そして未来へ」をビジョンとして定めている。今後とも地域農業を守り、発展させることを第一義とし、組合員をはじめ利用者・地域住民の多様化・高度化するニーズに対し、総合力を生かして的確に応えるとともに、JAの健全性・信頼性がさらに高まることを目指し、役職員一丸となって全力で取り組む所存である。日本もJAも総合力の発揮によりこの難局を何とか乗り切るしかないのである。
【略歴】
(すぎやま・ただお)
昭和23年生まれ。栃木県農業短大卒。43年 真岡市中村農業協同組合入組、
平成11年 はが野農業協同組合参事就任、16年 同常務理事就任、19年 同代表理事常務就任。