リース業界再編成のなかで最良のパートナーとして
すなみ・たかお 昭和22年生まれ。東京大学工学部卒。昭和46年三井物産(株)入社。同社常務執行役員機械本部長、常務執行役員船舶・航空本部長、三井リース事業(株)代表取締役社長を経て、平成20年JA三井リース(株)代表取締役社長に就任。 |
――まず合併の背景はどういうことだったのでしょうか。
陶浪 昨年の4月1日に共同持株会社をつくり、10月に完全統合しました。実際には昨年秋の金融危機が発生する1年半前のまだ右肩上がりの時に始った話です。当時、リース業界は銀行の合併に伴って銀行系リース会社が大合併していくという流れがありました。そのなかで一定の競争力を維持していくための規模を確保し経営基盤を強化することがどこの会社でも課題でした。
――協同リースも同じ問題意識をもっていたわけですね。
堀田 協同リースは昭和47年に、農協の世界でもリースという機能が必要だということで農林中金、全農、全共連の出資によって設立され、昨年まで36年間、JAグループのリース会社として活動してきましたが、陶浪社長が説明したような業界の流れがあり、検討した結果、三井リース事業が最良のパートナーだという結論に達したわけです。
――そう判断した理由はなんですか。
堀田 協同リースには農協系統という強固な出資者基盤があります。それに、三井物産グループという強い企業群が加わることで、新会社の財務基盤は、各々が単独でいるよりも大きく強くなります。そして商社系の会社ですから、協同リースが未開拓であった分野とかビジネスモデルを持っていますので、それを農協にも適用できるのではないかという判断もありました。
――最近、盛んにいわれている農商工連携の先取りですね。
陶浪 そうですね。協同リースからみればJAグループ外、いわゆる系統外のノウハウを取り入れ、系統外マーケットに進出できることがあったと思います。三井リース事業としては、農業分野は未知の分野ですが、将来性を考えると大きなポテンシャルがあるという認識があり、大きな期待感がありました。
◆社会に貢献することで利益は後からついてくる
――協同リースは協同組合精神がベースにあり、三井リース事業は商社系の会社でしたが、これをどう融合して社風をつくっていこうと考えていますか。
陶浪 協同リースも株式会社であった以上は、事業を継続していくために必要な利益は追求していたと思います。
そして商社は「利益第一」と思われていますが、三井物産では社会に役に立つ良い仕事、存在意義のある社会貢献につながるような会社になっていくことを企業理念として掲げています。良い仕事を積み重ねていけば利益は後からついてくる。利益の量ではなく利益の質を重視しています。ですから収益第一ということでは決してありません。
それは、協同リースでも三井リース事業でも同じであったと思いますね。
――新会社になっても農協組織からみれば変わらないということですか。
堀田 協同リースはJAの組織の成り立ちや仕事がよく分かった上で、JAの役割発揮や成長に何が必要でそれにどういう寄与ができるかを考えてきました。JAグループがリース会社を持つ理由や目的は、そこにあったはずですから。
相手と一緒に成長していく、パートナーとして一つひとつの取り引きを考えていく、そのことはJA三井リースになってもなんら変わりません。
◆お客のニーズにあったサービスを提供する「知融」
ほった・みつる 昭和27年生まれ。昭和49年農林中央金庫入庫。同金庫営業統括部長、常務理事、協同住宅ローン(株)代表取締役社長、協同リース(株)代表取締役社長を経て、平成20年JA三井リース(株)代表取締役副社長に就任。 |
――会社案内などに「知融」という言葉がよくでてきますが、どういう意味ですか。
陶浪 これは付加価値の話です。例えば、飲料メーカーが銀行から融資を受けて自動販売機を買うことはできますし、リースで借りることもできます。ここまでは資金をどう調達するかの話です。
私どもの場合は、さまざまな場所に設置されている自動販売機の売上げや販売管理、メンテナンスなど保守管理、そして固定資産ですから、税金や保険の手続きまですべてのことについて面倒をみるという「サービス」を付加したリースです。モノを貸すだけではなく、モノに付随したサービスを一切合財提供しますから、お客さんは使うだけでいいわけです。
金融の変形としてのリースではなく、お客様にあったサービスについて知恵を絞ってつくり提供(融資)しますという意気込みをこめた言葉として「知融」といっています。
◆会社も個人も「新しい責任の時代」
――御社でも新入社員を採用されていますが、若い人たちにはどんなメッセージを社長としては贈りましたか。
陶浪 オバマ大統領の就任演説を引用して「新しい責任時代」ということを話しました。一昔前の若い人たちは「自由が大事だから縛られたくない」と派遣労働者になる人が多かったと思います。
ところが最近の調査だと「社会の役に立つ仕事がしたい」という答えが増えているそうです。若い人たちに社会に対する責任という意識が芽生えてきていることは、心強い傾向だと考え「責任」ということを自覚して行動してもらいたいということが第一点です。
そして、会社も社会的な責任を負った存在なので、仕事を通じて社会に貢献していくことを意識し、仕事に活かし、仕事を通じて自分を磨いていってください、という主旨の話をしました。
――そういう社長の考え方は、協同組合精神と相通ずるものがありますね。
堀田 これからの企業社会で必要とされる考えは、相当に協同組合の考え方と接近してきていると思います。だから、合併しても違和感がないのだと思います。
陶浪 新しい世界と一緒になり目標がいっそう鮮明になりましたから、互いに磨きがかかるという非常によい組合せだといえます。
――生産者にとってリースのメリットは何でしょうか。
堀田 昨年度の第2次補正予算で「食料供給力向上緊急機械リース支援事業」として50億円の助成が設定されました。本事業全体で9000件を超える申し込みがあったのですが、担い手の方はリースのメリットをよく理解されていると思います。
陶浪 農機や自動車をリースに切り替えることで、メンテナンスなどをリース会社が行うこともでき、使うだけでよいという利便性がありますから、そのことを理解された担い手の方々とのよいコンタクトがこれで広がるという期待感が大変に強くあります。
◆所有」ではなく「使用」する世界へ
――最後にこれからの農業について希望も含めてお話ください。
堀田 仕事とからめていえば、生産コストをいかに下げるかが大きな課題ではないかと思います。稲作でいえば農機具への設備投資は大変に大きいので、これをリースとかレンタルなど「所有」ではなく「使用」にする世界を何とか築けないかと思っています。
それから日本列島は地域地域で条件が違いますから、一律的な対策ではなく、家族経営をうまく活かした施策が必要ではないかと思います。そのときに小さい経営規模でも使いやすいリース商品をご提供したいと思っています。
陶浪 先進国で自給率40%という国はありませんから、絶対に解決してもらわなければいけない課題だといえます。私どもは各県に駐在員をおきすぐに動ける全国ネットワークがありますので、地域にあったご提案をし、日本農業に貢献したいと考えています。
――今日はありがとうございました。
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