3仮比重
仮比重は100ccの底付きの円筒管に「風乾土」を入れて、土を詰めて軽く5回ほど底を床に叩き軽く詰め、不足土壌を加えすり切れとして土の重量を測る。同じ操作を4〜5回繰り返し平均値を測り、円筒管の容積で割れば仮比重が算出できる。
円筒管がなければ、容量が分っている計量カップでも良い。厳密には、乾土換算するが、風乾土の水分を1割程度とみれば測定値に0.9掛ければ良い。
仮比重は表1のように土壌の種類によって異なり、仮比重が小さい土壌は、三相分布の孔隙率が高く、土壌硬度が低く柔らかい場合が多い。
土壌診断結果から圃場当たりの肥料・資材を算出するときに必要な係数で、具体的には、次の計算式で算出する。
施用量(Kg/10a)=(改良目標値―分析値)mg×100/肥料の利用率(%)×100/肥料成分量(%)×作土の深さ(cm)/10×仮比重
4耐水性団粒
団粒構造が発達すると、図1に示すように一次粒子が結びついて多次粒子を形成し、それらが根の腐敗物、カビの菌糸、微生物が生成する多糖類などの粘質物が接着剤となり微小孔隙ができ、さらに発達して大孔隙を形成する(図2)。
農業で大切なのは、簡単に水で壊れない団粒であり、耐水性団粒という。団粒構造が発達すると孔隙量が増加するが、大きな孔隙には空気が入り、これが水の通り道となるため排水性も良くなる。一方、微小団粒は毛管現象で水が保持されるので、保水性が高まる。従って、団粒構造が発達している土壌は、保水性、通気性、排水性が良好な土壌であり、土壌も柔らかく根が侵入しやすく、耕うんもしやすい。また、大小の孔隙は多種多様な微生物のすみかにもなっている。
団粒構造を発達させるには、易分解性の有機物の施用が効果的である。以下は全農の農業技術センターで行われた試験であるが、図3はなたね油かすの事例で、有機質肥料を施用することにより有効団粒が増加することを示している。
図4はメロン栽培で使われる上床栽培を想定した栽培床土壌に有機質肥料と無機質肥料を施用し、土壌の水分の変化をみたものである。
(A)は土壌が最大に吸収できる湿った水分状態(最大容水量の100%)にした後24時間の水分変化をみたものであるが、有機区は約1日で通常の栽培に適する圃場容水量(pF1.8〜2.0)まで戻るのに対し、無機区はいつまでも湿った状態であり、排水性が悪いことを示している。
一方、(B)は圃場容水量状態の土壌に潅水をしないで水分の変化をみているが、無機区は7日で生長阻害水分点(pF3.0)に達するのに、有機区は初期には早く減水するが7日経っても水分は維持される。これらのことから、有機肥料を施用すると団粒構造が発達し、土壌が排水性、保水性の両方の機能を持つことがよく分かる。
一方、バーク堆肥のような分解しにくい粗大有機物は、団粒構造の形成の効果は少なく、むしろそのものが粗孔隙の形成や膨軟性の改良に役立っていると考えた方が良い。
耐水性団粒の測定には、専用の機器を使用するが、現場でも簡易に測定する方法を筆者は検討した。直径12.5cm、深さ5cm程度の0.5mmか1mmの篩とそれが余裕をもって入るくらいの深さ10cm程度のポリ製容器を用意する。篩の網目が隠れる程度の水を容器に入れる。水中に浸した篩上に2mmで篩った生土40gを広く均平にのせる。篩を網目が水面ぎりぎりまで持ち上げた後、自然に落下させ、この操作を50回繰り返す。
篩上に残った土を丁寧に蒸発皿に移して、乾燥後の重量を測定する。生土は水分を測定し乾物換算し、その重さに対する重量%を団粒として算出する。団粒が発達している土壌の判定は、0.5mmの団粒であれば40〜50%、1mm以上の団粒であれば15〜20%以上を目安とする。
乾物換算しなくても、篩の上に土壌がどれくらい残っているかを見るだけでも、団粒構造が発達した土壌であるかどうかは概ね実感できる。
(前回はこちらから)
※吉田吉明氏の姓「吉」の字は、常用漢字で掲載しています。
【著者】吉田吉明コープケミカル(株)参与 技術士