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種苗開発の裏話

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第7話 時代の変化と品種開発4  タマネギの巻

 タマネギはほぼ全世界で栽培され、野菜の中でもベスト3に入る重要品目です。原産地は中央アジアのアフガニスタン、タジキスタン、中国天山山脈西部付近と推定されます。中近東や地中海沿岸地域で野菜として発達し、紀元前4000年代にエジプトではすでに記録がある歴史の古い野菜のひとつでもあります。
 伝播した地域からわかるように乾燥地に適応した野菜であったため、収穫期に雨が少ない地域にまず栽培が広がっていきました。そして、現在では赤道直下の高地帯や北緯50度以上の北欧地域まで広く適応できるまでの品種分化を遂げています。

ネオアース◆病気に強いタマネギ「カムイ」北海道で人気に

 タマネギはほぼ全世界で栽培され、野菜の中でもベスト3に入る重要品目です。原産地は中央アジアのアフガニスタン、タジキスタン、中国天山山脈西部付近と推定されます。中近東や地中海沿岸地域で野菜として発達し、紀元前4000年代にエジプトではすでに記録がある歴史の古い野菜のひとつでもあります。
 伝播した地域からわかるように乾燥地に適応した野菜であったため、収穫期に雨が少ない地域にまず栽培が広がっていきました。そして、現在では赤道直下の高地帯や北緯50度以上の北欧地域まで広く適応できるまでの品種分化を遂げています。
 日本へは明治初期に米国経由で渡来したとされ、これらの初期の品種をもとに、大阪に土着した品種が「泉州黄」、北海道の地に適応したものは「札幌黄」として品種分化していきました。
 日本の本州の気候はタマネギの収穫時期に梅雨があり、また冬も寒く、本来タマネギが好む気候とはかなり異なります。このため本州で改良されたタマネギは、非常に晩抽性に優れ多湿条件でも病害に強いという性質を獲得することになりました。タキイでは1962年にはこれらの特性を活かした「OY黄」というF1品種を発表して、タマネギもハイブリッド種子の時代に入りました。初期の品種は扁平な形の品種が多く、その後徐々に球形で貯蔵性が高い品種に改良され現在に至っています。
「カムイ」 北海道では「カムイ」という収量性の高い貯蔵用の品種が、1990年代後半にヒットしました。カムイとは神の意味ですが、「タマネギの神様のような品種に育って欲しい」というブリーダーの願いを込めたネーミングでした。「カムイ」は春まき秋どりの作型の中で、非常に葉の耐病性が高い品種であったため、それまでたくさんの農薬散布が必須だった北海道のタマネギ栽培に大きな変化をもたらす品種となりました。病気に強いため3分の1程度の減農薬栽培でも栽培が可能となりました。夏でも青々としたカムイのほ場は、葉枯れした他の品種のほ場とは全く異なっていました。現在は、北海道も夏の高温化が激しいため耐暑性もあわせ持つ品種へと替わってきていますが、コスト面、安全性の両面から耐病性は益々重要となっています。タキイは土壌病害プラス茎葉病害にも強いことを基本姿勢として育成を続けています。
「カムイ」 現在、北海道ではトレイ育苗機械定植の大規模生産が中心となっています。448穴の密植のトレイにコート種子を播種する育苗システムでは98%もの高発芽を要求されますが、採種農家との連携でこれに対応することができました。厳寒期の播種期への対応として、タキイではエクセルプライムという途中まで発芽を進めた種子を開発し、1週間遅くまいても早く生える種子を提供して農家を支援しています。
 育種のみならず、採種や種子加工などの工程を通し、様々な技術の組み合わせで現在の種子という商品は成り立っているわけです。

◆タマネギは家庭菜園の定番品!

アトン 現在、国内生産は秋まき栽培において地産地消、直売所、あるいは家庭菜園も含めて作り手の顔の見える生産が重要性を増してきています。野菜を購入する場所はスーパーマーケットだけでなく、直売所等での買い物に楽しさを感じる消費者が増えています。このような場所では地域性、季節性、お客様の好み等に対応できるバリエーションも大切となってきます。
 タマネギは家庭菜園の定番品目です。秋に植えておけば春には収穫できて、長く貯蔵ができることから家庭菜園でたくさんの愛好家がいます。消費者のご希望に沿えるよう、早どり可能な品種、とびっきりおいしい品種、長期の貯蔵が可能な品種、秋にも新玉が出荷できる品種などを開発しています。タキイのブリーダーの次なる狙いは、体にいいポリフェノール(機能性成分)たっぷりの品種です!

【著者】羽毛田智明
           タキイ種苗(株)研究農場次長

(2009.11.16)