◆無花粉ヒマワリ『サンリッチ』
ヒマワリの中で、国内切花生産量の75%を占めるのが『サンリッチ』です。育種は、時としてひょんなことから開発の糸口が見つかることがありますが、サンリッチもこの例かもしれません。
今から30年程前、タキイのヒマワリ開発は切花用品種を意図したものではなく、花壇用の極矮性品種を育成するのが狙いでした。ところが育成に使った素材の中に切花用の系統も含まれていたため、育成を進めるうちに交雑後代の中から背の高いヒマワリも分離してきました。そして、これらの高性個体のうちの1個体がブリーダーの目に留まり、ここがサンリッチ開発のスタート点になりました。
サンリッチの開発は「雄性不稔性」という花粉が出ない性質を取り入れて品種づくりを進めました。世の中では花粉アレルギーが社会問題化しており、できあがった無花粉のサンリッチは好意的に迎えられました。また、無花粉にすることで色彩がより鮮明になり、テーブルや衣服を汚すことがなくなったことも評価されました。
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国内の切花ヒマワリシェア7割以上の『サンリッチ』
◆ヒマワリは子どもの教育にぴったり
サンリッチとは「太陽いっぱい」を意味しています。明るく大人も子供も元気が出そうなネーミングということで生まれました。各品種名はフルーツの名前由来で、例えば「サンリッチ=オレンジ」は、「太陽をいっぱい浴びたおいしいオレンジ!」というイメージで付けられました。
近年、父の日の花としてヒマワリを使うことが定着して来ましたが、明るく力強く、元気が出る花として、まさに「お父さん」のイメージにぴったりだと思います。
サンリッチは夏場、タネまき後50【?】60日で咲きます。夏休みに入る10日ほど前にまいておけば休みの終わる頃に立派な花を咲かせるので、夏休みの観察日記の材料としても最適です。シンプルな花型のヒマワリは子どもにも親しみやすく情操教育にももってこいなので、教育現場にもっと取り入れて欲しいものです。
現在出回っているヒマワリは明るい花色を持つ品種が主体ですが、シックなイメージのヒマワリ品種づくりは大いに開発の余地があります。今後は奥深さを感じさせるようなヒマワリ、バラのようにさまざまな趣きを持つヒマワリなどが開発されることが期待されます。
タキイ種苗(株)研究農場次長