シリーズ

JAは地域の生命線

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環境にこだわり、時代のニーズに応える JAグリーン近江(滋賀県)

・環境保全型農業のトップランナーに学ぶ
・環境こだわり米は、「炭酸ガスを排出しない施設」で
・琵琶湖の水質改善は、農業の課題だった
・支店主導で地域にあった特産品を
・一集落一経営体をどう磨くか

 滋賀県の琵琶湖南岸から東の県境までを管内にもつJAグリーン近江。広大な近江盆地で伝統的に作られてきたコメと麦、大豆などの穀物と、三大和牛としても数えられる近江牛が有名だが、全国の環境保全型農業のトップランナーとして「環境こだわり米」の取り組みでも耳目を集めている。JAの今堀会長、三井理事長はじめ役員の方々に、環境こだわり農業や集落営農などの取り組みと、JAのこれからの方向性などを聞いた。次代の営農事業を見据えた新たな特産品開発の取り組みとともに紹介する。

竜王町弓削にある環境こだわりカントリー。火力を一切使わないで乾燥させる。

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竜王町弓削にある環境こだわりカントリー。火力を一切使わないで乾燥させる。

環境保全型農業の
トップランナーに学ぶ

今村奈良臣(東大名誉教授、JC総研・所長)

集落あげての魚道造りや食育に取り組む「魚のゆりかご水田」 JAグリーン近江の管内は、「三方よし」で知られた近江商人発祥の地として知られている。しかし、いまやJAグリーン近江の地域農業興しの路線を一言で表現するならば「五方よし」(嘉田由紀子滋賀県知事)に象徴される路線を徹底する環境保全型農業のトップランナーであると位置づけることができる。「五方よし」とは何か。[1]生きものによし、[2]地域によし、[3]農家によし、[4]琵琶湖によし、[5]子どもによし、の五つである。
 周知のように琵琶湖は京阪神一千万人のかねてよりの水源であり、豊かな食卓を彩る水産物の豊庫であった。その象徴が「ふなずし」である。ふなずしはニゴロブナで作られてきたが、そのニゴロブナが激減してきた。合成洗剤を含む家庭排水による水質悪化などもあったが、水田圃場整備と用排水分離によるニゴロブナの産卵場所と稚魚の生育場所がなくなったこともその大きな要因であった。その改善のため「魚のゆりかご水田プロジェクト」を関係集落とともにJAグリーン近江が中心となって立ち上げた。ニゴロブナの再生を図る路線を推進しつつ、「魚のゆりかご水田米」の商標登録を実現し、「生きものでにぎわう農村づくり」をモットーに、JAグリーン近江の次の時代をめざす多彩な地域農業活性化の活動が進められている。
 それを象徴する一つが「環境こだわりカントリーエレベーター・とれさランド」であろう。火力を一切使わず自然乾燥方式により米の持つ本来の味を生かし消費者の求める米を、という施設である。近江米の声価をこれから生かす拠点になるであろう。
 さらに、兼業深化、農業労働力の激減、高齢化の進展の中で水田農業を中心に多彩な集落営農の組織化・法人化が進められており、高生産性農業の実現、水田の多様な活用、米麦のみならず多彩な野菜や畜産物の生産など目を見張る展開を見せている。
 こうした実践を指導し、新しいものづくり、地域づくりを支店ごとにきめ細かく指導しているのがTACである。JAグリーン近江のTACの活動はおそらく全国の模範になると私は受けとめた。私が代表をつとめる自主的全国研究組織であるJA―IT研究会は創立十周年を迎えるが、JAグリーン近江は創立以来の会員であるとともに、その現地での活動成果、研究成果を公開研究会でたびたび報告し、全国にその模範を示してくれてきた。全国の環境保全型農業のトップランナーとして、更なる発展を熱望するものである。

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JAトップインタビュー

琵琶湖の水質改善は、
農業の課題だった

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【出席者】
(前列左から)
今堀治夫 氏 経営役員会会長
(司会)今村奈良臣 氏
三井久雄 氏 代表理事理事長
(後列左から)
大林茂松 氏 管理担当常務理事
森本長一 氏 金融担当常務理事
岸本幸男 氏 代表理事専務
岡本 守 氏 営農経済担当常務理事

◆4月に集落あげて魚道を造る

 今村 今、世界的に水危機が叫ばれ水質汚染の問題が深刻化しています。JAグリーン近江は環境保全型農業のトップランナーであり、その取り組みをぜひ全国に発信したいと思います。農業、生活、文化など琵琶湖を取り巻く水環境についてお聞かせください。
今堀治夫 氏 経営役員会会長 今堀(写真左) 琵琶湖の面積は約6万7000ha。滋賀県の6分の1で、淡路島とほぼ同じです。以前、周辺水田で大規模な圃場整備に取り組みましたが、結果として労働コストは削減できたものの逆に水質汚染が広がってしまいました。汚染源は大きく3つです。自然によるものは手の施しようがなく、家庭排水は全国的にも有名になった昭和50年代の石鹸運動もありましたが、その後の下水道普及によって少なくなりまして、最後に残ったのが農業でした。
 そこで平成13年から県が主導する形で肥料農薬を5割減らした環境にやさしい農産物を作ろうという取り組みが始まりましたが、従来の営農指導がいかにして一粒でも多く獲るかを考えてきたのに対し、少々収量を減らすことになったとしても環境にやさしいやり方を、という指導は大変な苦労でした。しかし16年には県の条例で環境直接支払い制度も始まり、琵琶湖の水質は改善されつつあります。
 しかし19年には国の農地水環境保全向上対策が始まり、全国的にも環境保全型農業が推進され滋賀県の優位性が薄まってきたので、安心安全を求められる消費者の声に応える新たな付加価値を、と始めたのが「魚のゆりかご水田」です。昔は琵琶湖と田んぼの水位がパラレルで、琵琶湖のニゴロブナが田んぼに入ってきて産卵し稚魚を育てて琵琶湖へ帰っていたのです。それを復活させようというものです。
 今村 兵庫但馬のコウノトリ水田米とか、新潟のトキ水田米のように付加価値をつけて販売できるわけですね。だけど魚のゆりかご水田は、魚道設備の苦労もあって広がりが難しいのでは?
 今堀 魚道を造れるところは全部やろう、ということで毎年4月の第1日曜日に集落をあげて魚道づくりをやっています。もちろんブロックローテーションで麦の割り当てが来た年はしっかり麦をやりながら、平均で2〜4本の魚道を造っています。環境直接支払いがあり、消費者からの付加価値の評価も得ておりますが、やはりなかなか根気がなければ続けていけません。平成24年度から新たな環境保全型直接支払い対策が国でスタートすることにもなっておりますことから、これからもできるだけ多くの水田で広げて行きたいと思っています。
 今村 JAグリーン近江の課題は、そういった高度な技術体系があるので、野菜を組み合わせたり、加工も含めて付加価値をつけたり、女性やお年寄りなどの労働力をうまく組みあわせて行くという組織づくりではないかと思いますが、どうですか。


◆一集落一経営体をどう磨くか

三井久雄 氏 代表理事理事長 三井 富山県に次いで、本県は水田化率が高く、我々の管内も同様水田化率95%でありしかも、兼業化率が90%、また二種兼業が95%と非常に高く、1年1作の土地利用型農業が中心です。しかし昨今のように米価が下がり農業の形態も変わってきた中で、土地を守り、コストを下げ、多様な作物もつくり、それでいて余剰労力を活用し高齢者でもできるような農業の形をどうつくるかは大きな課題です。現在、管内には120ぐらいの特定農業団体があり、法人化したのは21。今年中にもさらにいくつか法人化の予定があります。農業を守り、地域を守り、集落を守るために、今後も集落営農と法人化をすすめていきたいと思います。
 岡本 全国的には集落営農をつくったら即法人というのが多いかもしれませんが、当JAでは特定農業団体を経てから法人化を進めています。経営の安定率から考えても、まずは特定農業団体という組織が多いですね。
 大林 法人化については、JAとのパートナーシップやつながりが重要だということで、ほとんどはJAが一部出資して、経営のことだけでなく、購買、販売と色々な事業で協力することをめざしています。
 三井 付加価値をつけた販売では、大中の湖のカメムシ斑点米防除で特許を取得している額縁収穫方法を60haぐらいで進めています。これは平成17年に名古屋で行われた「愛・地球博」でも、農業団体では唯一当JAだけが表彰を受けました。これは東京の生協と出荷契約をして販売しています。
 今村 それにしても近江というのは、なんでもできるところですね。気象条件も、土地条件もいいですし。
 三井 しかし京阪神が近くてサラリーマン農家が多いので、JA経営としては都市型と地方型の中間のようで、なかなか専業化したり、農業一本でやりたいという人が出てこない地域なんですよ。
 今村 そういった地域での共済、信用事業はどうですか。
 岸本 共済事業については3Q訪問活動の完遂をめざして取り組んだことで、利用者のニーズを的確に拾うということがしっかりできていると思います。これは当JAの運動方針と全国連の目標が一致したことで、一定の成果が出ていると思います。
 森本 信用事業については、とある大手の地方銀行が管内にも進出してきたため、熾烈な金融市場争いが起こっています。私どもの信用事業の柱は住宅ローンなのですが、東日本大震災の影響で住宅資材がなかなか入ってこないため、工期の遅れなどで収益に影響が出るのではないかと心配しています。
 今村 今はあらゆる所で消費者の目が厳しくなっていますよね。そういった中で販売方法なども含めてこれからの農協のあり方はどうあるべきでしょうか。
 今堀 これまで農協はすべからく大量に捌くという分野で力を発揮してきました。その力は今もあると思いますが、さて現代のように相手が小口になった時、機動的、弾力的にどう動くかというのは課題です。例えば、高齢化が進んで直売所にも来られなくなった人たちをどうやってJA事業の中に取り入れていくか、ということなどです。先日、JA全中は農業復権に向けた政策提言を発表しましたが、当JAでは一集落一経営体という時期はすでに完遂していますから、これから、それをどうやって磨いていくかを考えていきたいと思います。
 三井 その政策提言の中で地域のライフラインとしてのJAの位置づけがありました。方向性には賛成ですが、それでは具体的な事業収支をどうするかは難しいところです。例えば、当JAの生活購買店舗は大手スーパーの進出などもあり赤字が膨らんでしまって、今は全て廃止してしまいました。移動購買車も検討しましたが、やはりなかなか収支的に難しい。ただ、次世代を確保するためにも販売力を伸ばさないといけませんし、ある程度のリスクも考えた上でしっかり収益を確保し、農業と生産の復権に向けた取り組みをすすめたいと思います。
 今村 役員の皆さまからさまざまなご意見を聞けて大変勉強になりました。ありがとうございます。

 

現地ルポ

「一粒でも多く」から、
「環境へのこだわり」へ

 【環境こだわり米】

◆炭酸ガスを排出しない施設で

火力を使わないで乾燥させるDAG JAグリーン近江が「環境こだわり米」の取り組みを始めたのは10年前の平成13年。当時は135.6haと小規模でのスタートだったが、県の推進とも重なり年々作付けが増加。22年には水稲作付面積の3割以上を占める2700haとなり10年間で20倍に増大し、JA管内全9地区で合計25の部会や団体が取り組んだ。
 管内は東西に広く、平野部から中山間地までさまざまな地域・土壌特性がある。「環境こだわり米」は、それぞれの地域に適した品種を、適した栽培方法で、取り組んでいる。
 その拠点が、総事業費約10億円をかけ平成17年3月に稼動を始めた「環境こだわりカントリーエレベーター とれさランド」だ。全国的にも非常に珍しい、環境こだわり米に特化した施設で、処理能力はコメ3000トン、小麦756トンになる。
 大きな特徴は2つある。
 1つは、化石燃料を一切使っていないこと。
 一般的なカントリーエレベーター(CE)は火力による熱風で穀物を乾燥させるが、ここではヤンマー農機の独自技術である常温除湿乾燥システム(Dry Air Generator=DAG)を使い、空気を加温せず常温で空気中の水分を除去して乾燥させる。限りなく自然に近い形で乾燥させるためコメ本来の旨みを損なうことがなく、食味向上にも貢献している。
 施設建設を決める際、組合員から「せっかく環境にこだわって作ったコメなのに、それを商品化するカントリーが炭酸ガスを排出して環境を汚すようではダメだ」との意見があり、このシステムの導入が決まった。

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火力を使わないで乾燥させるDAG


◆効率やコストよりも「こだわり」を

 2つめの特徴は小型の乾燥貯蔵ビンを並べることで、小単位での管理を可能にした点だ。
 通常のCEは300tクラスの大きなサイロを備えるものだが、ここでは1つ50tと小型のものを66基持つ。1つの大きさを小さくしたことで、さまざまな品種や栽培方法に従って小口で集荷、乾燥、仕上げができる。つまり最大で66種類の製品にキメ細かく対応できるのである。
 当然、小口にすることでコストは格段に高くなる。しかし、「環境こだわり米」は農薬の記帳などさまざまな条件があるため、できるだけロットを少なくした方が管理しやすいという。「当然、効率は悪いし、いっぺんに大量に火を使って乾燥した方がコストは安くすむ。しかし効率やコストよりも、とにかく環境にこだわりたい」(大林茂松常務)という強い思いを形にした。
 小口で分けられるためトレーサビリティへの対応も万全だ。CE内では入庫から出荷まですべてを追えるシステムを完備し、消費者からの信頼性向上、リスクの軽減、有利販売・ブランド化に役立てている。現時点で正確に細かくトレースできるのは製品出荷履歴までだが、「やはり生産から消費までを一本でつなぎたい。最終的には消費者が、携帯とかインターネットとかでどこの誰がいつ肥料を入れて、どんな機械を使って作ったコメなのかがわかる仕組みをつくりたい」(岡本守常務)と、さらなるトレーサビリティの強化にも意欲的だ。
 他にも、大中の湖では特許も取得している「畦畔雑草の2回連続草刈り」、「額縁別収穫」、「色彩選別機利用技術」の3つを組み合わせた特殊技術で農薬を使わずにカメムシを防除する環境こだわりヒノヒカリの栽培や、琵琶湖と水田を魚道でつなぎ田んぼでフナが産卵・成育できるようにした「魚のゆりかご水田」など、さまざまな“環境こだわり”の取り組みを進めている。
 近年では「環境こだわり特産物」として、野菜や果樹でも環境にこだわった栽培を推進し、着実に生産を伸ばしている。


【特産振興】

◆野菜自給率40%・・・もっと伸ばせる!

 JAで今、力を入れているのは、野菜などの特産品と少量多品目の生産振興だ。
 昨今、主産のコメをはじめ、これまで生産に注力してきた黒大豆も価格が落ちてきて先行きが不安定な状態だ。さらに、これから益々高齢化が進めば、生産者にとっては省力で作れるものを、遠くまで買い物に行けなくなった高齢の消費者にとっては手軽に地元で揃えられるものを求めるニーズが高まるだろう。「将来の営農事業を考えたとき、米以外の多様な作物が必要だ」(岡本常務)との観点から、コメ、麦、大豆と複合での特産品開発を進めている。
 その方向性は、「あまり大きな販売目標や大型産地化をめざそうというのではなく、土地柄、風土柄を踏まえて、小さいものを少しずつ積み上げて行くやり方」(同)で、すでに高齢の農業者向けにナバナ、ミエンドウなどの生産振興は一定の成果をあげている。


◆支店主導で地域にあった特産品を

中江営農部長(奥から2人目)とTACのみなさん(手前は今村氏) 滋賀県はカロリーベースの食料自給率が50%で全国平均よりも高い一方、野菜の自給率は全国平均83%に対し、40%ほどと半分ほどの低さだ。「これだけ低いなら、逆に販売をもっと伸ばすことができる」(同)との考えで、将来的なファーマーズマーケットの出店も視野に入れた特産振興策として始まったのが、「1支店1企画の特産品づくり」と「特産TAC」の設置だ。
 支店による特産品づくりは、これまで基本的に本店の営農事業部が主導していた特産振興を、支店主導に切り替えようというもので、21年からスタートした。
 JAグリーン近江は平成6年に9JAが合併して誕生した。いまでも、旧9JA管内それぞれに少なくとも1つ、計15の支店がある。それぞれの地域にはさまざまな特性があり、特産品は地域の実情にあったものをその地域ごとに作らなければ定着しない。また、支店主導であれば自ずと地域内流通が高まり、地産地消の促進にもつながる。

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中江営農部長(奥から2人目)とTACのみなさん(手前は今村氏)


◆特産TACがエンジン役に

営農活動発表会では地域食材を使ったカレーの試食も すでに、根菜類の栽培に適した土壌の八日市では八日市ニンジン、獣害の顕著な中山間地域が多い永源寺ではサルやシカに荒らされにくい赤しそ、など地域の実情にあった特産品の開発が成果をあげている。日野では、赤と白がはっきりわかれた見た目にキレイなカブの仲間の伝統野菜「日野菜」の復興に取り組み、3年間で栽培農家数は3倍になり、県内外のレストランへの出荷も急伸。インターネット通販のJAタウンでも売られている「JA日野菜漬」は、年間5万袋を販売するヒット商品となった。そのほか、加工用キャベツ、抑制カボチャ、北之庄菜など、さまざまな特産品が次々と生まれている。
 毎年2月、営農指導の職員らによる1年間の活動成果発表大会を行っており、そこでの発表はこれまでコメ、麦、大豆の発表がほとんどだった。しかし、今年2月の発表会では発表者11人中7人が特産野菜の取り組みを発表するなど、内容はがらりと変わった。
 そんな支店主導の特産品づくりを支援するのが「特産TAC」だ。
 20年7月から担い手対策課としてTACを設置。昨年まで6人のTACが担い手への訪問活動を行っていたが、今年から1人増員するとともに、特産担当のTACを任命した。従来の訪問活動を継続する5人のほか、2人が「特産TAC」として特産品振興に重点をおいた担い手訪問を始めている。今後のさらなる特産品づくりのエンジン役として、その活動が期待されている。

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営農活動発表会では地域食材を使ったカレーの試食も


【集落営農組織の法人化】

◆「経営意識の高い法人が集まるJAに」

ファームにしおいそ安田代表 集落営農組織の法人化を促進する一環で、昨年11月に管内21の法人代表らで組織する「JA出資型法人連絡協議会」が設立された。その初代会長であるファームにしおいその安田惣左衞門(67)代表理事に、組織の取り組みとJAへの提言を聞いた。
 ファームにしおいそは、TACの支援をうけ22年3月に法人化。現在、組合員82戸だが通常の作業人員は50人ほど、経営面積50haでコメ、ジャガイモを主に生産している。安田さんの両親は農業者だが本人は定年まで会社勤めをしていたという経歴で、安田さん以外の組合員は全員兼業農家で農業の素人集団だという。
 「私自身がずっと会社員だったこともあるが、サラリーマンのど素人でもできて、国の制度の変転に耐えられ、補助金が半分になって、米価が7000円ぐらいになっても儲かる農業が目標だ」という安田さん。綿密なコスト計算と、多種多様な品種・栽培方法の組み合わせでそれを形にしている。
 JAと法人組織の関係について、「今のJAのやり方では経営意識が強い人ほどJAから離れていき、そうでない人たちが残る構造だ。だから必然的にJAの経営基盤も弱体化してしまう。もっと意識の高い組合員がたくさんJAに集まり、購買も販売も利用するから要望でもなんでも好きに言えるようになってJAはそれに答える、というようにお互いの関係を強くすることが重要だ」と語った。

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ファームにしおいそ安田代表 

(2011.05.13)