シリーズ

信用・共済分離論を排す

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第5回 信用・共済事業分離の取り下げ

―総合JA批判の背景とは その5―
・組合員の力で守る
・経済事業に矛先変える

 1月26日の政府の行政刷新会議規制・制度改革分科会の検討で、JAの信用・共済事業の分離は取り下げられました。代わって、「農協の農業経営支援機能の再生・強化」として、信用・事業収益から農業関連部門への補てんの段階的縮減や幅広い人材のJA経営層への登用などが課題とされています。
 昨年暮れに、新世紀JA研究会(代表・JA東西しらかわ鈴木昭雄組合長)で民主党に要請を行い、その際、内閣府の平野達男副大臣から「心配されないように」との発言がありましたが、その通りになりました・・・。

◆組合員の力で守る

 1月26日の政府の行政刷新会議規制・制度改革分科会の検討で、JAの信用・共済事業の分離は取り下げられました。代わって、「農協の農業経営支援機能の再生・強化」として、信用・事業収益から農業関連部門への補てんの段階的縮減や幅広い人材のJA経営層への登用などが課題とされています。
 昨年暮れに、新世紀JA研究会(代表・JA東西しらかわ鈴木昭雄組合長)で民主党に要請を行い、その際、内閣府の平野達男副大臣から「心配されないように」との発言がありましたが、その通りになりました。その際の理由は、地域の農業振興にJA以外、代わる組織はいないという極めて納得のいくものでした。
 半面で、TPPについては、「アメリカがトラックに20%以上の関税をかけている、乗り遅れれば韓国勢に後れをとる」といった発言もあり、政権中枢に対する財界の圧力には想像を絶するものがあることを実感しました。
 今回取り下げになった信・共分離問題については、理論武装とともに、現場のJAでは、総合JAのよさをJA運営に存分に生かし、日頃から組合員に総合JAの支持を確実なものにしておくことが何よりも重要です。信・共分離を防ぐのは、最終的に組合員の力だからです。
 外に向かって分離反対を叫ぶのはたやすいのですが、現実のJAは総合JAのよさを活かした運営を行っているとは言い難いものがあります。総合JAのよさが発揮されないのは、JA合併に主な原因がありますが、これについては、別に述べることにします。


◆経済事業に矛先変える

 農協の農業経営支援機能の再生・強化とは
信・共分離に代わって、「信用・共済事業部門から農業関連部門への補てんの段階的縮減や幅広い人材のJA経営層への登用」が取り上げられていますが、これも慎重に議論してもらいたいものです。
 「補てんの段階的縮減」の背景には、農業関連部門の赤字と信用・共済部門からの繰り入れが常態化しており、これが農業関連部門の自立や意欲の妨げになっているという認識があります。
 この認識は、信用・事業収益からの補てんがなければ農業振興の仕事が困難であるというJAの営農現場の認識と真っ向から対立します。強引に「補てんの段階的縮減」を進めれば、JAは赤字部門からの撤退を余儀なくされ、地域の農業は益々疲弊して行きます。
JAの農業自立の努力は欠かせませんが、農業関連部門の自立は、国の農業政策による個別営農の確立にあることが忘れられてはなりません。
 とくに、全国で1000億円を超える営農指導経費(3〜4割は行政業務)は、JAが負担している事実を直視すべきです。
 また、JA経営への人材登用については、「職員や専門家など幅広い範囲から優れた経営スキルを有する人材を登用し経営を委ねることが出来るよう、農協経営の制度設計の抜本的見直しを行うべきである」としています。
 この内容が何を意味しているのか分かりませんが、仮に経営管理委員会の徹底などが考えられているとすれば由々しき問題です。「現状維持と組織保護が自己目的化したJA」の存在などは論外ですが、多くのJAでは、優れた経営力と改革意欲に満ちた人材がリーダーシップを発揮しています。
 優秀な経営者を確保するのは当然ですが、いたずらに制度をいじり、JAらしい運営が出来ないような仕組みをつくることは、将来により大きな禍根を残すことになります。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2011.02.21)