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信用・共済分離論を排す

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JA批判は総合事業・農業・協同組合の否定だ

―総合JA批判の背景とはその6―
・信用・共済事業分離への不断の備え
・あの手この手のJA潰し

 信用・共済事業の分離問題は取り下げられましたが、今回のJA批判の背景には、閉塞状況のもとでの農業を犠牲にした大企業のさらなる利潤確保や地域・農村市場でのシェア確保やグローバル市場経済推進のもとでの、農業やJAの抹殺の意図があることは明白です。
 こうした事情から、信用・共済事業の分離や准組合員の廃止問題などは、常に検討課題に浮上してくることが必至であり、これらのJA批判への不断の備えが必要です。

◆信用・共済事業分離への不断の備え

 信用・共済事業の分離問題は取り下げられましたが、今回のJA批判の背景には、閉塞状況のもとでの農業を犠牲にした大企業のさらなる利潤確保や地域・農村市場でのシェア確保やグローバル市場経済推進のもとでの、農業やJAの抹殺の意図があることは明白です。
 こうした事情から、信用・共済事業の分離や准組合員の廃止問題などは、常に検討課題に浮上してくることが必至であり、これらのJA批判への不断の備えが必要です。
 JA批判は、総合事業の否定、農業の否定、協同組合の否定の三つの側面からなります。
 JAからの信用・共済事業の分離はJAの総合事業を否定するものであり、これは結果として農業の否定につながります。
 JAが信用・共済事業を兼営し、営農活動に力を入れないから農業が振興しないという一見するともっともらしい分離論は、信用・共済事業の収益をつぎ込まなければ農業振興は不可能であるという実態を全く無視したものです。
 JAの総合事業が否定され営農指導・農業関連事業が独立採算となれば農業振興の事業は立ち行かず、地域農業は一層窮地に立つでしょう。
 JA以外に、採算確立が難しい営農・経済事業の担い手がそう簡単に現れることは考えられません。総合JAに代わる稲作専門農協の設立などは幻想にすぎません。
 信用・共済事業を分離して無理やりJAを潰しても、JA以外に地域のセーフティ・ネットの役割を果たす組織は存在しないのです。


◆あの手この手のJA潰し

 「農林・地域活性化ワーキンググループ」では新たに、信用事業を兼営するJAは他業態との公平な競争条件確保の観点から問題だなどとする観点からのJA批判も出されています。
 これは、金融・保険業務の相互乗り入れなど総合化が時代の趨勢になっていること、また兼営は組合員の利便性・理解のもとに行われていることなどが無視されています。 まさに、あの手この手のJA潰しの議論です。
 准組合員の廃止も総合JAを否定するものです。この意見は、准組合員を含めた組合員全体で地域の農業振興を担っているという現状や、准組合員がJAを信頼して利用している実態などを全く理解しないものです。
 さらに、准組合員は営農指導事業や経済事業の赤字を負担させられており、この事実を知らされていないなどという意見もだされていますが、これももっともらしい頭の中での愚論に過ぎません。
 准組合員の皆さんは、JAが行う地域の農業振興に要する費用負担について、それが問題だなどとは言っていません。また、信用・共済事業のサービスが他企業に劣れば、准組合員の皆さんはJAを利用しません。地域を支える人びとの知恵はそれほど愚かなものではありません。
 信用・共済事業分離論は直接の協同組合潰しではありませんが、地域における信用・共済事業分離によってJAの存立が困難になれば、JAに代わる組織の存在は考えられず、結果として地域のセーフティ・ネットの役割を果たす協同組合自体が存在しないことになります。
 それにしても、JAは総合事業で成り立っていますが、その特性を発揮した運営が必ずしも行われているとは言えない、JA運営の実情を変革する自らの努力が求められています。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2011.03.09)