◆JA情報活用研究会の開催
去る8月24日に、東京・秋葉原で第1回JA情報活用研究会セミナー(金子光夫代表:山口県JA周南経営管理委員会会長)が開催されました。セミナーではJA周南の金子代表の基調報告「JA周南におけるデータベースを活用した経営戦略」が行われ、続いて以下の個別報告が行われました。
[1]JA周南:直売所「菜さい来んさい」の利用者別の購買動向分析
[2]JAいずも:JA総合情報データベースの活用方法
[3]JA兵庫六甲:組合員深耕日報
[4]JA東京むさし:総合顧客管理システム
[5]JA松本ハイランド:農業経営管理支援に向けての情報活用「らくらくWebシステム」
また、質疑では、情報システムのコストの問題、名寄せの方法、事業ごとの縦割り情報との調整などの意見交換が行われました。
JA情報活用研究会は、平成22年8月の第1回を皮切りに、以降9回の研究会が行われ、それを踏まえて今回のセミナーが開催されました。この研究会は、JAの総合性の特色を最大限に生かす組合員の情報活用とは何かについて研究することを目的にしています。この研究会での報告・意見交換を通じて、次第に明らかになってきた諸課題を踏まえ、JAの経営問題について考えます。
◆情報活用の課題
[1]プロダクト・アウトからマーケット・インの情報活用へ(情報の使い方)
組合員情報の活用は、基本的に組合員の側に立った情報活用であり、これまでの連合会がつくったタテ割り情報の活用から組合員のニーズのありかを発見する情報活用姿勢への転換が求められます。また、JAの組合員情報は、大別すると、企画情報と渉外情報に区分されるので、活用の方向を明らかにした対策の方向が求められます。
企画情報の分野は、将来の組合員の年齢構成の変化に基づく事業量の減少予測とその対策などこれからのJA戦略構築のための情報活用の分野です。
さらに、渉外情報活用の分野については、iPadなどの情報機器の開発などにより、組合員とのつながりが希薄になるなかでの新たなフェース・トゥ・フェースの関係を模索して行くことが課題です。
[2]情報を活用する側の意識の改革
情報は与えられるものではなく、加工して活用するものです。いくら有効な情報であっても、その情報の価値を発見する目・能力がなければ猫に小判です。その意味で活用する使う側に、情報利活用の能力と意識の改革が求められます。
[3]何よりも経営としての自立が求められる
JAの組合員情報の活用は、むしろこれまでの経営のあり方・仕事のやり方の転換を求めるものです。その意味で、この問題はJAの経営者の問題であるとも言えます。
◆対応の方向?自立したJA経営
JA組合員情報の活用とは、今までの勘に頼ったJA運営からの脱却を意味することであり、仕事のやり方を変えて行く経営の改革でもあります。したがって以上のような課題解決のためには、結局のところJAの経営者能力の向上が求められます。
組合員の情報活用はJA自らの問題であり、連合会は、JAのあくまで手助けとしての出番しかありません。JAが自立するためには、情報は自分で構築しなければなりません。組合員情報はじめ必要な情報データベースは、JA単位で構築し、必要に応じてJAの企画情報、渉外情報として自在に活用できる体制を構築して行くことが目標になります。しかし、この問題は、情報データベースの構築とともに、その情報を活用できる人材の育成が同時に求められますので、一朝一夕にはできることではありません。長期戦を覚悟で取り組む決意が必要です。
総合JA研究会主宰