◆支店重視の経営とは
第26回JA全国大会で支店重視の運営の方向がうち出されました。この支店重視の経営とは何を意味するのでしょうか。これまで支店の合理化を進めておいて、今さら何だと言う声が聞かれますが、この決議は、JA運動史上画期的な方向転換を示す意義ある決議と言って良いでしょう。それでは、この決議をどのように理解すべきでしょうか。
大会決議以来、1支店1協同活動、支店独自の広報紙の発行などの事例紹介が盛んに行われるようになりました。しかし、この支店重視の運営は、思い付きのアイデアではなく、JAの明確な経営政策の転換として理解する必要があります。経営政策とは、JA運営の基本的な考え方であり極めて重要な概念ですが、JAでは、多くの場合、こうした経営政策は意識されません。
これまでにも述べましたが、これまで、JAは合併効果を出すためにひたすら集中・集権的な運営を行ってきました。合併は、単なるJAの寄せ集めの「合体」ではなく、合体JAでは意味がないと考えられ、その意味で、「合体JA」からの脱却が進められました。「合体JA」からの脱却は、経営政策としては「集中・集権型経営」の確立を意味します。集中・集権型経営とは、JAの本店に、ヒト・モノ・カネの活用や権限などをすべて集約し、本店の号令一下、支店を動かして行く経営政策です。この政策のもとでは、経営方針はもとより、Plan・Do・See(計画・実行・見直し)の全てが本店中心に行われます。
こうした「集中・集権型経営」に対置されるのは、「集中・分権型経営」です。集中・分権型経営とは、経営資源の配分や権限行使について、本店と支店の役割を明確にした経営政策です。集中・分権型経営政策のもとでは、必要に応じてPlan・Do・See(計画・実行・見直し)が支店に権限委譲されます。
◆必要とされる意識転換
「集中・集権型経営」は、JA本来の協同活動の強化からは相反する経営と言えますが、これまで、JAは合併効果を出すため、やむを得ず集中・集権型の経営政策をとってきました。JA大会では、JAらしい経営を確立して行くためには、もうそろそろ支店重視の運営(集中・分権型経営政策)の方向を打ち出さないと、手遅れになると判断したのでしょう。その意味からは、今回の決議は、歴史に残る画期的なJA経営政策の大転換として理解する必要があります。
支店重視の方向とは、従来の本店中心の「集中・集権型経営」から「集中・分権型経営」への経営政策の転換なのです。しかし、一口に「集中・分権型経営」といっても、その内容は判然としません。
それは、分権の程度が、置かれたJAの状況によって、様々に異なるからです。支店重視の運営を確かなものにするためには、これを単なるスローガンに終わらせず、明確な経営政策の転換として理解し、JAがそれぞれの実態に応じてその具体的な経営システムを考えて行く必要があります。
JAは協同組合であり、運営の基本は、組合員の協同活動を盛んにして行くことにあり、その運営は、組合員により近い支店を中心にした分権型の経営が欠かせません。「集中・分権型」の経営は、「集中・集権型」の経営よりは、はるかに難しい経営であり、システムの開発とともにそれを担う人材の育成や意識改革が求められます。しかも、これまでのように、中央会に経営指導の多くを期待することはできません。合併の最終章である「集中・分権型」の経営の実現には、この問題に対するJA幹部の深い理解と決意が求められます。
総合JA研究会主宰