確かな技術力と豊かな人間性で農家に貢献する
◆原点に返りいま農業に何が必要かを考える
――昨年は東日本大震災、さらに秋の台風など自然災害が多い年でしたし、東電の福島第一原発事故や欧州の経済危機による影響など人災も多く激動の1年でしたが、そうした厳しい環境下でも御社は前年度実績を上回る決算をされましたが、その好調の要因はなんでしょうか。
「いま農業で何が求められているのかを、もう一度原点に返って考えてきました。水稲用除草剤でいえば、いかに環境に優しいものにするか、つまり投下薬量を減らせるかというようなことです」
「水稲用除草剤は通常10a当たり50gから多いもので150gまきますが、わが社が22年11月に農薬登録を取得したピリミスルファン(商品名:ベストパートナー)は、わずか6.7gですみます」
――水稲用除草剤は各社から次々と新剤が投入され戦国時代の様相を呈していますね。
「いま150くらいの水稲用除草剤があるそうです。水稲用除草剤は私どもの看板商品ですから負けるわけにはいきませんが、環境に優しいことや投下量が少ないことから販売面は好調です」
――キーワードは環境ですか。
「環境に優しく、省力化できることです。例えば軽くてまきやすくしかも有効成分が均一に拡散する『豆つぶ』剤がありますし、他の作物や住宅が近接している水田での飛散を極力抑えた『微粒剤F』もあります」
◆世界トップクラスの技術で農家のニーズに応える
――微生物農薬と化学農薬を融合した剤を開発されていますね。
「『クミカハイブリッド農薬 クリーンシリーズ』といっていますが、化学農薬と微生物農薬の長所を融合した環境調和型資材といえます。これによって化学農薬の量を少なくしたり、キュウリのうどんこ病などに相乗的な効果を発揮します」
――こういう剤はいままでになかった…。
「微生物は生きていますから、それと化学農薬を一緒にしたものは、世界でわが社だけの技術です」
「投下薬量を減らして環境への負荷を低減したり、豆つぶ剤などで省力化を実現してきたことが生産者の方々に受け入れられてきている。それが好調の要因だと考えています」
――農家にとっていま何が大事かを考え、そこに絞り込んで薬剤を開発してきている…。
「農村に、農家にしっかり軸足を置くことをコンセプトに開発を進めてきています」
「そして薬剤として効くことは当たり前のことですから、そこからもう一歩入っていかないと受け入れられない時代になってきました。それを実現するのは技術力です」
――以前から石原社長は、日本の農薬会社の技術力は世界でもトップクラスだといわれていますが…。
「それは原体の開発力もありますが、箱処理剤を始めきめ細かい製剤技術をもった国は他にないと思います」
――最近は豪州で、畑作用土壌処理除草剤のピロキサスルホン(商品名SAKURA)が上市されこの春には米国やカナダでも登録が予定されるなど、海外への進出も盛んですね。
「わが社の場合、3割強が海外です。ピロキサスルホンも1ha当たり100gで済むという薬剤で、米国・カナダに引き続いてブラジルや欧州に広めていきたいと考えています」
――これからはどんどん海外へ目を向けていかれるわけですか。
「日本国内にしっかり根を張って、そのうえで海外へというのがわが社の基本的な考え方です」
◆農業に貢献し「日本一」の会社に
――昨年1月に社長へ就任されたときに『日本一の企業になる』といわれたと聞きましたが…。
「規模ではなく、風通しが良く、働きやすい職場で、社員の所得を高めて日本一になろうということで、みんなでがんばり、昨年はいい実績を上げられましたし、今年も同様に実績をあげられるとみています」
「『日本一』にはもう一つ意味があります。それは一般社会に向き合った企業になることです。そして企業は社会に貢献しなければなりません。私たちは、農業の生産性を上げることで社会に貢献するという目標を設定しています。それが受け入れられることで利益を上げることができます。そしてその利益はまず株主への配当と社員へ還元するとともに将来のために再投資することで再び農業へ貢献することができます」
「そうすることで、わが社の企業価値が向上し『クミアイ化学に勤めてよかったな』となると信じています」
――社員の方のモチベーションも高くなりますね。
「社員の人間性を高めることも大事だと考えています。JAの方々からのご指導やご協力を仰ぎ、農業に貢献するためには、クミアイ化学の社員の人間性がどのようなものかが問われますから…」
――技術力と社員の方の人間性が御社を支える車の両輪だということですね。
「それが私どもへの信頼につながっていくと考えています」
――そのことで日本農業を支えていく…。
「そういう自負をもち『これはクミアイ化学にお任せくださいという気持ちをもって欲しいです。そうなれば自ずと『日本一』になってくるのではないでしょうか」
「そして日本一になると、品位と品格を磨いていく必要があると思います」
「そうなれば、製品はもちろんですが社員もしっかりしているので、『クミアイ化学なら安心だ』と生産者から信頼されると思います」
――お話を伺っていると、クミアイ化学は家族的な温かい日本らしい企業をめざしているように見えますが…。
「日本らしい企業をめざしています。まず日本農業に役立ったうえでの海外だと考えています。」
――言葉ができ海外でも通用する人材の育成も必要に…。
「言葉も必要ですが、センスがよく人間性のよい人間を育てることだと私は思います。国内でもそうですが、”クミアイ化学の人間とつきあっていると役立つ”と信頼されなければダメだと思います」
◆これからの日本には「農業」と「医療」が大事
――お仕事の面だけではなく、社長は日本農業に対する熱い思いを抱かれていると仄聞していますが…。
「これほど良い土壌がある国は世界にありません。そして豊かな水があり、冬でも太陽の光が燦々とふりそそぎ、四季があり、寒いといっても1年中家庭菜園はできます。こうした恵まれた国土をもう一度見直すべきだと私は思います」
「そして山里に行けば山里の、九州には九州の、北海道に行けば北海道の農業があり、日本農業はよく言われるような暗い面ばかりではありません」
「そして世界的な食料問題に対処するためにも、農業関連の技術開発や基礎研究に夢を持ち、情熱を燃やす若い人材と、理想を描いて農業の実践に取組む若いエネルギーがいまこそ必要だと思います。そして、日本農業にロマンと自信を取り戻して欲しいと私は思っています」
――これからの日本にとって農業は重要な役割を担っていくということですね。
「これからの日本にとって重要なことは農業と医療です。ですから大学の医学部と農学部を充実することが大事だと思います」
「理学部や工学部などの最先端の科学ももちろん大事ですが、世界に比べて日本はあまりにも『農』をないがしろにしていると思います」
「日本の農を担っていくために、ぜひ若い人たちを中心に元気に農業に携わって欲しいと思います。クミアイ化学はそうした方々のお役にたてるよう努力をしていきます」
――ありがとうございました。