農薬にはいくつもの名前が
Q:一つの農薬に対していろいろな呼び方があるようですが、どうしてですか。
A:生物農薬をのぞいて、農薬は化学物質ですから、その有効成分の化学名(化学構造に基づいて付けた名前)で呼ぶのが、最も間違いない命名です。しかし、一般に化学名は複雑で専門家以外には馴染みがなく、極端に長くなる場合もあって、実用的ではありません。そこで、一般名には、(1)工業及び化学技術上の規格標準化と調整をする国際的機関の「国際標準化機構(ISO)」が推奨する国際的に通用するISO一般名と、(2)権威のある専門学会により承認された一般名が使われます。
その両者が一致する場合もあります。学術雑誌ではこれらの一般名が使われます。
種類名は、日本国内で農薬登録をする際の名称で、一般名に粒剤とか乳剤といった剤型をつけた名称です。商品名は販売のためにメーカーが製剤ごとに付けた名前で、試験名は農薬の開発試験段階での名称です。
このように、いろいろな命名がなされているのは、管理するそれぞれの立場の人に分かりやすく、間違いなどを防止するためです。
農薬の名前の標記例を以下に挙げます。
例1)ISO一般名:fenitrothion(フェニトロチオン)
一般名:MEP
化学名:O,O-ジメチル-O-(3-メチル-4-ニトロフェニル)チオホスフェート(CAS名)
O,O‐ジメチル‐O-4-ニトロ?m-トルイルホスチオマート(IUPAC名)
商品名:スミチオン、ガットキラー、スミパイン
種類名:MEP乳剤、MEP粉剤など
試験名:S-5660
例2)ISO一般名 Thiophanate-methyl
一般名:チオファネートメチル
化学名:ジメチル〔1,2-フェニレンビス(イミノカルボノチオニール)〕ビス〔カーバメイト〕(CAS名)
ジメチル4,4’-( O-フェニレン)ビス(3-チオアロファネート)(IUPAC名)
商品名:トップジンM、トップグラス
種類名:チオファネートメチル水和剤、チオファネートメチル粉剤など
試験名:NF-44
(「なるほど!なっとく! 農薬Q&A」農薬工業会より)