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現場に役立つ農薬の基礎知識

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第6回 病害虫の特性、地域ごとの実態に合わせた防除を―大豆の病害虫防除(上)

・開花2〜6週間ころに防除
・密植を避け風通しをよくする
・播種前に薬剤処理をする

 大豆は、水田転作の主要作物として奨励されてきたが、ここ近年は横ばいからやや減少の傾向にある。それとは対象的に、飼料用米や米粉用米の作付が大きく拡大しているが、これは、水田を水田として使用でき、畑地化に伴う苦労が回避できる点が大きいようである。大豆は、排水の悪い圃場で栽培すると根腐れや病害によって被害を受けることが多いため、水田からの転作の場合は、まずは圃場の排水が鍵となるようである。
 大豆に限らず、どの作物も地域毎に発生する病害虫が異なるため、防除対策は地域での発生状況に合わせて組み立てる必要がある。指導機関の防除指導や発生状況を確認した上で防除を行ってほしい。ここでは、主な大豆病害虫の特徴と防除上の注意点を2回に分け紹介する。
 なお、防除薬剤の選定にあたっては「適用農薬剤一覧表」を参考に、適用病害虫、使用方法を確認して使用薬剤を選ぶとよい。一覧表には、希釈倍数などの使用方法詳細は省いてあるので、実際の使用場面では、農薬のラベルをよく確認して、正しく使用願いたい。
 「大豆の主要害虫と防除法」は次号に掲載する。

大豆の主要病害と防除法


紫斑病

◆開花2〜6週間ころに防除

大豆の病害虫防除(上) 文字どおり、大豆の子実に紫色の斑紋ができる病害である。発生すると品質が落ちるため、大豆の重要病害のひとつである。病原菌は、糸状菌(かび)であり、種子伝染する。このため、発生の無い圃場から取った健全種子をできるだけ用い、種子処理もきちんと行うことが大切である。なお、ベンゾイミダゾール系薬剤(トップジンMやベンレート)を種子処理に使う場合、同薬剤に耐性をもった病原菌が発生している場合があるので、指導機関に確認し、もし耐性菌が発生している場合にはこの系統の農薬は効き目がないので、散布も含めで使わないように注意する。この病害は、葉には褐色からやや紫色を帯びた濃褐色の病斑ができ、開花2週間から6週間ころ子実へ感染するので、農薬を散布する場合は、この時期を逃さずに防除する。結実期に気温が20℃くらいで雨が多いと発生しやすいので、このような気候の時は特に注意する。

 

べと病

◆密植を避け風通しをよくする

 病原菌は水を好む糸状菌(かび)の仲間であり、温暖で多湿な気候条件の時に発生しやすい。
 葉や子実に発生し、葉では初めに淡い黄白色の円形小斑点となり、だんだん融合して不整形の褐色病斑になる。
 その病斑の裏には、白色から灰色の綿毛状のかびが生えているので、見分けがつく。子実に白いかびがマット状に付着するので、特に、黒大豆で品質が悪くなる。被害作物の被害茎葉とともに越冬するので、被害植物は集めて焼却する。
 また、種子にも寄生するため、発生の無い圃場から取った健全種子を使用する。窒素過多にならないように注意するとともに、できるだけ蜜植を避け、風通しをよくして湿度を下げるとよい。降雨が発病を助長するので、農薬は、できるだけ降雨の前に散布する。


茎疫病

◆播種前に薬剤処理をする

大豆の病害虫防除(上) 近年全国で発生が増えている病害で、地際部に水浸状の褐色病斑をつくり、苗立ち不良や、立枯れ、早期枯凋を起こして、収量、品質に大きな影響がある。病原菌は、べと病と同様に水を好む糸状菌(かび)の仲間であり、大雨や長雨後に多く発生する。このため、排水をよくし、高畝で栽培すると病害の発生を少なくできる。
 農薬防除では、発生する場所が、若い時期の茎葉の地際部でもあり、散布薬剤が効きにくい。そこで、近年では、播種前の種子にあらかじめ薬剤を処理しておき、その処理済種子を播種することで病害の発生を抑える薬剤が登場(クルーザーMAXXやボルテックスFSなど)し、好成績をあげているようである。この方法は、種子に一括して処理するため、圃場で薬液散布する手間が省かれ、労力面でもメリットがある方法として注目されている。その他、地域によっては、亜りん酸肥料を使用することにより、苗立ちがよくなり、健全なダイズが育ちやすくなる事例もあるとのこと。


その他の病害

 以上の他、葉焼病や黒根腐病、白絹病、菌核病、斑点細菌病などがあるが、これらの病害が発生する地域では、まずは病害の特性・地域毎の実態をよく把握した上で、指導機関の指導従って防除願いたい。

大豆の適用農薬一覧

 

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           第6回

(2012.06.06)