品質向上のため確実な防除を
◆品質・収量に大きな影響与える「穂いもち」
いもち病は、苗から穂まで水稲の生育期間を通じて発生し、もっとも怖い病害であることはいうまでもない。特にこの時期に発生する穂いもちは、品質や収量に大きな影響を与える。穂いもちとは、稲穂に発生するいもち病の総称で、籾いもち、穂首いもち、枝梗いもちなどと発生部位で呼び分けられている。穂いもちは、葉いもちが多く発生した場合や、出穂時期に感染好適日(高湿度、長雨)が長く続いたような場合に発生が多くなるので、そのような年には、早めの防除が必要である。
穂いもち防除は、無人ヘリコプターによる防除や本田散布剤(粒剤、粉剤、微粒剤F、フロアブル、ジャンボ)などで行うが、近年は長期持続型の箱施用剤の普及により、発生が少ない場合や地域によっては、箱施用1回で穂いもちまで防除できる場合がある。
しかし、多くの地域では、箱処理1回処理では防除の持続効果が足りず、穂いもち防除が必要になる場合も多いので、防除の省略を検討する場合は、複数年間は試してみてから判断願いたい。
本田のいもち病防除に使用される薬剤を表に整理した。いずれの薬剤も有効成分の性質により、予防的効果なのか、治療効果もあるのか、防除適期はいつかなどが一覧できるようにしてみた。特に水面施用剤の場合、防除適期を逃すと、全く効果がない場合が多いので薬剤を無駄に使用することがないよう注意してほしい。
(写真)
穂いもちには早めの防除が必要
◆吸汁跡から菌が浸入し変色米に
変色米の原因の多くは、カメムシなどの籾表面にできた吸汁跡から菌が浸入して起こっている。
このため、カメムシの防除を徹底するとともに、原因となる菌の繁殖を抑える働きのある薬剤、つまり変色米に適用のある薬剤を仕上げ散布に使用すると、変色米の発生も抑え、きれいな籾に仕上げることができる。
ただし、この場合も防除適期(変色米の病原菌が籾に侵入する前)を逃さず防除することが重要である。
◆カメムシ対策には穂ばらみ期以降の徹底防除を
斑点米カメムシには、大型のカメムシと小型のカメムシがおり、被害を起こす主なものは全部で15種ぐらいといわれている。
近年は、小型のカスミカメ類(アカヒゲホソミドリカスミカメ・アカスジカスミカメ)の斑点米被害が多く発生している。
まずは、カスミカメ類についての知っておきたいポイントを紹介する。
カスミカメ類の口吻は弱いので、籾殻を貫通して中の玄米を加害することは出来ない。このため、出穂〜乳熟期(出穂10〜14日後程度)の籾殻の先端部分はまだ柔らかく、また合わせ目も完全に閉じていない時期を狙い、カスミカメの成虫はこの柔らかい籾殻先端部分から口吻を貫通し、もしくは合わせ目の隙間から挿入させて加害する。このため、玄米頂部に斑点ができる被害が出やすいという特徴がある。
また、品種や栽培条件によっては、籾殻よりも中の玄米が大きく生育することにより籾殻の接合部に割れ目ができ、中の玄米が一部露出する籾、いわゆる「割れ籾」が起こることがあるが、この割れ籾であれば、カスミカメの弱い口吻でも容易に加害することができ、最も口吻が弱いカスミカメの1齢幼虫でも加害できるため被害が大きくなる。このため、頂部だけでなく、本来なら発生しないはずの側部にも斑点の被害が起こってしまうのである。
加害が生じる発生の時期は、およそ出穂15〜20日後程度である。
これに対し、ホソハリカメムシやクモヘリカメムシは自分で固い籾でも貫通する能力を持っており、カスミカメ類よりも籾への加害期間が長い。
しかも、大型のため薬剤を効かせにくい場合もあり、大型のカメムシが多く発生しているようなほ場では、特に加害時期の徹底防除が必要である。
カメムシ類の防除は、穂ばらみ期以降に1〜2回の防除の徹底が基本である。
近年は、ネオニコチノイド系薬剤(スタークル剤やメガフレア剤など)の育苗箱1回処理で小型カメムシ類は抑えられるようになっており、小型カメムシの発生がほとんどのような場合には、省力的で効率的な防除が可能である。
ただし、大型カメムシが混発していたり、優先しているような圃場の場合は、散布剤による徹底防除が必要である。
大型カメムシ対象では、キラップ剤が効果・残効面での評価が高いようである。
第15回