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現場に役立つ農薬の基礎知識

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第16回 多年生雑草を徹底防除する好機―水稲刈跡の雑草防除

・多年生雑草に多い難防除雑草
・地下30cm以上からでも発生する力が
・除草剤+発生源の塊茎を減らす
・クログワイの水稲刈跡散布による防除

 既に早場米が出回り、いよいよ本格的な稲刈りシーズンを迎える時期となった。稲刈り・乾燥・出荷が終われば、本年の水稲作作業も終わりを告げほっとする時期となるが、もうちょっとだけ田んぼに手を入れて頂きたい時期でもある。というのも、水稲の刈跡は、実は難防除である水稲多年生雑草を徹底防除するのに好都合な時期だからである。今回はこのことに焦点をあて取材してみたので、是非参考にしていただきたい。

◆多年生雑草に多い難防除雑草

 難防除雑草とは、文字通り防除が難しい雑草である。雑草というのは、いわゆる草であって、木のように固い体を持たず、地面より上にある部分は1年のうちに時期がきたら枯れてしまう。この時、次世代の繁殖器官として種子のみを残す雑草のことを一年生雑草といい、種子以外の地下茎(塊茎)や根っ子を残すものを多年生雑草と呼んでいる。
 この多年生雑草に難防除と呼ばれるものが多く、その代表的な雑草名は、クログワイやオモダカ、シズイ、ホタルイなどで、これらは、しばしば田んぼ内で優占化して除草剤の効果が十分に発揮されずに問題となる。


◆地下30cm以上からでも発生する力が

 では、なぜ多年生雑草は難防除と呼ばれるのだろうか?
 その理由は主に、雑草の生態によるところが大きい。
 例えば、多年生雑草の発生源の一つである塊茎は、地中のいろんな深さに分布しており、しかも、地下30cm以上もある深いところからも発生してくる力を持っていることが多い。このため、地上部に姿を現す時期がバラバラになり、残効の長いといわれる除草剤でも追いつかないほど長い期間発生し続けたりすることがある。
 その他、塊茎が種子に比べれば図体が大きく持っている栄養の量が多いので、種子を枯らす程度の除草剤の量では効き目が薄いこと、地上部が枯れても地下部が生きていて再生してくることなどがあげられる。
 最近では、一発処理除草剤の主流であるスルホニルウレア系除草剤(ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロンなど)に抵抗性を持つ雑草が優占化してしまって難防除となっていることもあるので、今までよく効いていたのに年々雑草が残るようになったり、多く発生する雑草の種類が限られるような場合には、抵抗性雑草が発生している可能性があるので注意が必要だ。

防除法
◆除草剤+発生源の塊茎を減らす

 基本的には、自分の田んぼに生えている雑草の種類や抵抗性雑草の可能性などを指導機関等にも確認しながら十分に把握する。その上で、その雑草に効果のある除草剤を選択して使用する。多くの場合、それだけで十分に除草効果があるはずである。
 ところが、多年生雑草の場合は、本田で散布した除草剤の効果が薄れる頃に塊茎を形成させたり、肥大させたりして、しっかり翌年の発生源をつくることが多い。
 このような特性があるため、難防除雑草を徹底的に減らすためには本田での効果のある除草剤の散布に加えて、翌年の発生源となる塊茎を減らすようにするとよい。
 具体的には、まず、塊茎が乾燥や寒さに弱いことを利用して、秋〜冬にかけて田起こしをすることである。これにより、地中にあった塊茎が地上に出てきて乾燥したり、寒さにあたったりして枯れてしまうのである。もちろん、たくさんある塊茎が全て表に出るわけではないので、完全ではないが、それでも翌年の発生源となる塊茎の量を減らすことができる。
 もうひとつの方法は、刈り取り後の塊茎を肥大させる時期に、茎葉から根まで浸透移行して地下部まで完全に枯らすことができる除草剤を散布することである。このことによって、塊茎を肥大させずに枯らすことができれば、翌年の発生源を大きく減らし、翌年の発生量を少なくすることができるというわけである。以下、この方法の効果が認められているクログワイを例に紹介する。


◆クログワイの水稲刈跡散布による防除

 クログワイは、稲の刈り跡にも茎葉が伸びてくるので、その茎葉に浸透性の高い除草剤を散布することで、塊茎の量を減らし、塊茎のサイズも小さくすることができ、翌年の本田でのクログワイの発生量を減らすことができる。この処理を複数年続けることで、特に効果が高くなる。
 別表に水稲刈跡散布の登録がある除草剤を整理したが、この防除の決め手は、除草剤の根までの浸透移行力にある。その点、ラウンドアップハイロードは根までの浸透力に定評があり、クログワイの水稲刈跡処理での有効事例も多いので、同剤を例にとって使用方法を紹介する。
 この除草法のコツは、クログワイの緑の部分が十分に残っている状態(目安20cm以上)で、ラウンドアップハイロードの50倍液をクログワイの茎葉に十分量散布することである。緑が残っていることで、雑草内での浸透移行がしっかり行われ、50倍液という通常より少し濃いめの液にすることで、根っこまで到達する有効成分の量を増やすことができる。
 もちろん、気候や地域の違いによって、最適な倍率や散布水量が異なるであろうが、ラウンドアップハイロードの場合、50倍液の10アールあたり50リットル散布が最も効果が高くお勧めのようだ。
 この方法は、もちろんスルホニルウレア抵抗性であっても問題無く効果があるので、クログワイの発生が多い田んぼや、抵抗性に悩まされているような場合には是非お試しいただきたい。

水田刈跡に適用のある除草剤一覧

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           第16回

(2012.09.12)