◆まず畑を乾燥させよう
秋播き小麦は、まず雑草の退治と畑の乾燥から始まる。
一般に秋の播種前に、過繁茂している雑草を非選択性茎葉処理除草剤で早めに枯らしてきれいにしてから、播種前に2〜3回耕転して畑を乾かしておく必要がある。
特に、水稲跡作の場合は水稲の終了後速やかに準備を始める必要がある。排水溝を掘って水はけを良くするなどして乾燥を十分にしておく。FOEAS(地下水位自動制御システム,農研機構・全農)を活用すれば、この水分制御が効率よく進めることができるようになる。
また、コムギは酸性に弱いので、田んぼが酸性に傾いていることが多い水稲の跡作では、苦土石灰など石灰質資材を投入し、pHを適正に保っておくとよい。
◆播種前後にきちんと除草対策を
それで、無事に畑の乾燥がすめば、いよいよ播種となるが、播種の前後に除草剤を使ってきちんと雑草対策をやってほしい。
耕起前に非選択性除草剤によって雑草を一掃させて安心したいところだが、播種後も越年生雑草を中心とした畑地雑草が生育してくるので、対策は怠りなくやっておきたい。
コムギ畑で被害を起こす主な雑草は、スズメノテッポウ(越年草・生育期間10〜6月・イネ科)、ヤエムグラ(越年草・生育期間10〜7月・アカネ科)、カラスノエンドウ(越年草・生育期間11〜9月・マメ科)、カラスムギ(越年草・生育期間9〜10月・イネ科)である。
いずれも、秋に生えて冬を越し、コムギの生育期間全般で生育し続けるので、対策には万全を期したい。
(写真)
カラスノエンドウ
◆除草の基本は土壌処理
コムギに登録のある除草剤は、別表のとおりであるが、コムギ畑での除草の基本は、やはり播種前後の土壌処理除草剤である。
近年では、コムギの生育期に使用できるスルホニルウレア系の除草剤(ハーモニー)が登場し、厄介なスズメノテッポウ対策等に貢献している。ところが、この薬剤に対する抵抗性を示すスズメノテッポウが発生しており、そのようなほ場では土壌処理剤を中心とした除草が効果的である。
この土壌処理除草剤では、トリフルラリン(トレファノサイド)剤やペンディメタリン(ゴーゴーサン)剤の効果に定評がある。いずれも雑草によっては得手不得手がある場合があるので、事前に指導機関の情報などを確認して使用する除草剤を選ぶようにしたい。
例えば、「カラスノエンドウにはトリフルラリンとジフルフェニカンの混合剤であるガレース乳剤の効果が高い」といった情報を、自分の畑で優先している雑草について集めておくと除草対策が立てやすくなる。
◆赤かび病の防除は丁寧に
一方、病害虫では、抵抗性品種の変遷もあり、昔問題となっていた、コムギうどんこ病やコムギさび病などはすっかり影を潜めている。近年、コムギの防除では、赤かび病対策が中心になっている。
コムギ赤かび病菌は、発病するとDON(デオキシニバレノール)やNIV(ニバレノール)と呼ばれるかび毒を発生し、DONについては食品の安全性を確保する基準として1.1ppmが設定されており、この基準を超過すると流通できないことになっている。
このため、赤かび病の防除は丁寧におこなう必要がある。
◆開花期〜乳熟期の雨に注意を
赤かび病は、主に穂に発生する。はじめ穂が褐色の点々が出てきて、頴の合わせ目に桃色のかびが発生し、病斑は段々広がって黒色粒になる。
この病気になった種実にはDONなどの毒素が含まれているので、混入しないようにしなければならない。
開花期〜乳熟期に雨が多いと発生が多くなるので、このような時期を中心に防除を徹底する。毎年発生しているような圃場では、特に注意が必要である。
登録薬剤は、別表のとおりであるが、効果の高いトップジンMには耐性菌が発生しているので、使用薬剤の選択にあたっては、地元の指導機関等の指導に従って選ぶようにしてほしい。
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第17回