◆カップ麺の原料の大半が米国産穀物
現在、スーパーに行き買い物をすると、確実にトウモロコシや大豆のどちらか、あるいは両方を用いた食品を購入することになる。肉や卵、牛乳などの家畜製品や養殖魚は、その飼料に用いられているが、加工食品も同様である。外見は国産でも中身は輸入原料が大半を占めている。その多くがトウモロコシと大豆由来である。
表は、あるカップ麺での原材料や食品添加物の表示である。この中で、トウモロコシや大豆由来の原料を用いた食材や添加物は、どのくらいあるのか。
植物油脂は、コーン油・大豆油が使われている可能性があり、でんぷん、糖類はトウモロコシ、醤油、植物蛋白、蛋白加水分解物は大豆、調味料はトウモロコシ由来の可能性がある。トウモロコシや大豆を用いた飼料で育った家畜由来の食材も、チキンエキス、ポークエキス、動物油脂、乳蛋白、卵、豚肉がある。
このように見ていくと、いかに多種類・多量のトウモロコシ、大豆由来の原料がカップ麺で使われているかわかる。これはほんの一例であり、ほかの加工食品も同様である。しかし、消費者はそれを意識することがない。その背景に米国の食料戦略があり、その戦略が新たな段階に来ている。
◆TPPと食品表示
いま、米国の食料戦略の柱になっているのが、遺伝子組み換え(GM)作物である。米国では、トウモロコシや大豆の9割がGM品種である。しかし、GM作物に対する世界の生産者や消費者の反対は強い。広がる反発への対抗策としてとられてきたのが、主に途上国へは食料援助であり、先進国へは自由化圧力である。
後者では、貿易を自由化させた上で、非関税障壁だとして表示をさせないことで、消費者がわからないようにするという戦略で、売り込みを進めている。
日本でGM食品の表示制度ができる際に、米国からの圧力で、大半の食品が表示義務からはずされてしまった。そのため豆腐、納豆、味噌程度しか表示されず、カップ麺でも、これほどGMトウモロコシや大豆が使われているにもかかわらず、「遺伝子組み換え」表示を見ることがない。
さらに加えて米国政府は、すでにTPPの構成国であるニュージーランドに対して、食料の貿易促進で最大の貿易障壁は、食品表示にあるとして、GM食品の表示撤廃などの圧力を強めている。現在、日本ではわずかな食品しか表示されていないが、そのわずかな表示すらなくせというのである。それはなぜか。
カップ麺でもっとも多く使われている原料は小麦である。現在、GM小麦は開発中でまだ商業栽培はされていないが、商業栽培が実現すれば、米国政府はGM小麦を世界市場に売り込もうとするだろう。しかし、米国内を含めて消費者の反発が強く、なかなか進まないのではないかと思う。GM小麦を売り込むためにも、表示はない方がよいのだ。現在の日本の表示制度では、GM小麦を使用した場合、その旨を表示しなくてはいけない。そうすると米国産GM小麦が売れなくなる。
TPP参加によって私たちの食卓は、ただでさえ低い食料自給を奪われ、大半を輸入食品に依存することになるが、GM食品が増え、それによって食の安全が奪われ、さらに消費者の知る権利の要である食品表示の撤廃に及ぶことになる。
市民バイオテクノロジー情報室代表