◆沖縄で違法種子流通
昨年、遺伝子組み換え(GM)パパイヤの種子が、台湾から不法に輸入され、沖縄で栽培され、流通していたことが判明した。日本で初めて、生のままGM食品を食べていたことになる。農水省によると、台湾から2005年から09年にかけて輸入したパパイヤ種子「台農5号」が、GM種子だったことが判明したもの。輸入したのは沖縄などの種子企業4社で、沖縄で5年間に3kgほどが販売され、パパイヤとしては年間約100トンが生産・流通していたもようだという。
農水省は種子企業に在庫の廃棄を求め、同時に販売先の報告を求めた。また、沖縄県は、栽培されている木の伐採を進めた。
この違法流通は、消費者庁によるGMパパイヤの表示制度の検討がきっかけだった。ハワイ産GMパパイヤ「レインボー」の承認を直前に控え、国立医薬品食品衛生研究所が、同パパイヤのGMか否かを検査する方法を確立するため、10年12月上旬に沖縄県内の農産物直売店やホームセンターで販売しているパパイヤの生果実と苗を購入、試験的に分析したところ、8検体のうち1検体からGMパパイヤが検出されたのである。
調査したところ、台湾で研究中のGMパパイヤと共通のDNAを持っていることから、台湾のGMパパイヤだとわかった。このGMパパイヤは、台湾でも作付けも流通もしていない。実に不思議な事件である。
このGMパパイヤは、パパイヤ・リングスポット病を引き起こすウイルスに抵抗力を持たせたもの。食品としては、アレルギーを引き起こす可能性はあると指摘されている。ハワイですでに栽培されており、以前もハワイ産が、日本の市場で違法に流れたことがあり、回収騒ぎとなった。
日本でこれまで栽培されてきたパパイヤは、JA宮崎中央が販売する、宮崎県総合農業試験場亜熱帯作物支場が、組織培養した苗から挿し木で増やしたGMでない品種が大半である。一部台湾やタイなどから種子や苗を輸入しており、それもGMではないはずだった。
この違法流通によって、沖縄のパパイヤ生産農家は、パパイヤが収穫・販売できなくなったばかりか、肝心のパパイヤの木を伐採され、大変な損害を被ったのである。その損害額は、7000万円に達したと考えられている。
GM作物は、同じ組み換え遺伝子を用いていても、品種ごとに承認を受けなければならない。ハワイ産のパパイヤも、台湾産のパパイヤも同じウイルス抵抗性だが、品種が異なるため、ハワイ産が承認されたとしても違法状態は継続されたままである。
◆GMパパイヤ、日本市場でほとんど並ばず
この事件の原因を作ったハワイ産のGMパパイヤ「レインボー」は、11年12月1日に流通が解禁となり、12月5日にはハワイから日本に向けて出荷された。これはすべて、日本で展開している米国系資本で会員制をとるスーパー「コストコ」へ向けたものだった。5ポンド・ケースで1248個が販売用、32がサンプル用として出荷された。他のスーパーがすべて、消費者に配慮して店頭に置かなかったのに対して、コストコだけが札幌、兵庫など10店で販売したが、その後、そのコストコでも並ばなくなった。
同パパイヤは、90年代に申請され、アレルギーを引き起こす可能性があり安全性に疑問がもたれていることから、食品安全委員会での審議が長引き、さらに表示の方法については消費者庁や消費者委員会での審議が長引いていた。米国農務省は、日本政府が申請(99年)から10年以上もかけて承認したことで、1000万ドルあった日本への輸出量が200万ドルまで減少したと指摘、非難した。その間、ハワイではGMパパイヤが広がり、日本への輸出が減少し続けていた。
市民バイオテクノロジー情報室代表