◆どこで作られたのか誰にも分からない
食品表示とはいったい何でしょうか。私たちが食品を購入する際に、その食品がいつ、どこで作られたものか、どのような方法で作られ、またどのような食材や食品添加物が使われているのかを知るためにあるはずです。しかし、現在の食品表示は、そのどれにも応えてくれません。
文章で物事を相手に伝える際に最低限、いつ、どこで、誰が、何を、どうした、何のために、という要素が必要です。食品の中身を伝える際にも同様のことが言えるはずですが、それが示されていないのです。
加工食品を例に具体的に見ていきましょう。まず、いつどこで作られたか表示されていません。以前は製造年月日が表示されていたのですが、米国など国際的な圧力によって、輸入食品が不利になるという理由で、賞味期限・消費期限の期限表示に変えられました。この変更に対して消費者団体は強く反対しましたが、政府は国際的な圧力に配慮したのです。
どこで作られたかは、ほとんどが「製造所固有記号」という記号で表示され、私たちには分からなくなっています。
例えば「販売者・何々」の後に「RF3」のような形で、アルファベットか数字で表示されています。そこが実際にその食品を作っているところです。これでは誰にもわかりません。
◆隠されてしまう食品添加物
食材については、例えばニンジンと出ていても、そのニンジンが輸入したものなのか、国産なのかも分かりません。加工食品にはさまざまな食品添加物が使われていますが、その大半が表示されていません。その代表例が「一括表示」と呼ばれるものです。乳化剤、香料、増粘多糖類、調味料(アミノ酸等)などで、具体的に何が使われているか分かりません。これらは確かに物質名が分かりませんが、表示されているだけまだましなのです。もっとわからないものがあります。それが「キャリーオーバー」と呼ばれる、隠された食品添加物です。
例えば、あるカマボコを例に見ていきたいと思います。カマボコには魚のすり身が用いられています。表示では「魚肉(たら、いとより)」としか表示されていません。しかし、これらの魚の多くは冷凍された状態で輸入されたものです。このような場合、凍結したり解凍したりする際に変質するのを防ぐ、添加物が使われています。よく用いられるのが、ソルビットとリン酸塩です。それらは使用されていても、原料に使われたものであり、加工食品を作る際に用いたものではないことから、表示しなくてもよいのです。
これはほんの一例です。加工食品によく使われている原料に植物油があります。これによく用いられているのが、消泡剤のシリコン樹脂です。
植物蛋白もよく使われている原料で、その多くが増量材として用いられています。この植物蛋白によく用いられる添加物が、調味料・着色料・酸化防止剤・香料などです。さまざまな化学物質が使われていながら表示されていないのです。これがキャリーオーバーと呼ばれるものです。
例えばこんな問題も発生します。醤油などに防腐剤として安息香酸ナトリウムが用いられていることがあります。これも表示されません。このような醤油が用いられている加工食品に酸化防止剤としてビタミンCが用いられていたとします。この両者が存在すると、化学反応を起こして発がん物質のベンゼンが生成されることがあります。しかし、食品表示を見ただけでは、ビタミンCしか表示されていませんから、消費者は気が付きません。気が付かないうちに発がん物質を摂取しているかもしれないのですが、避けることができません。
このように、いまの食品表示は、消費者の、その食品を知りたいという要望に応えるものになっていないのです。もともと食品表示は、消費者がその食品がどんなものかを知ることができ、それによって選ぶことができなければいけないはずなのに。
市民バイオテクノロジー情報室代表