「青いバラ」は国内でのGM作物
商業栽培へのイントロ
◆安全性を確認された108品種
いま日本で商業栽培されているGM作物は、昨年11月にサントリーが販売を開始した「青いバラ」だけだ。これは食料となるものではないので、食料となるGM作物の商業栽培は日本国内ではまだ行われていない。
しかし、表1のように「安全性審査の手続きを経た」GM食品は、今年1月21日にトウモロコシとワタの各1品種をが、そして3月8日にトウモロコシ7品種が官報に掲載され108となった。安全性審査を終えたGM食品が初めて官報に掲載されたのは01年3月30日で35品種だった。この10年間で3倍以上増えたことになる(※1)。
01年に初めて安全性審査を終えたものの中には、モンサント社の「ラウンドアップ・レディー・大豆40-3-2系統」(除草剤耐性大豆)や「Mon810」(害虫抵抗性トウモロコシ)、シンジェンタ社の「Bt11」(害虫抵抗性・除草剤耐性トウモロコシ)など、著名なものが並んでいる。
そして現在、申請中で審査を受けているものが12品種ある。その中にはハワイで栽培されているウィルス抵抗性・パパイヤ(ハワイパパイヤ産業協会)も含まれている。
安全性審査を終えた108品種は、国内で栽培はされていないが、輸入され加工されたりして、私たちの食卓にのっている可能性はかなり大きい。
◆姿を変えさまざまな食品に
それではどのような形なって食卓に登場してくるのか。それをまとめたのが図1と表2だ。この図表は、食品などの消費材にGM作物を可能な限り原料として使用しないとする生活クラブ生協の調査データに基づいて作成したもので、例えば大豆を原料にどのような加工食品があるかを示している。
したがって、ここに記載されているものが必ずGM作物を使っているとは限らない。トウモロシの中に記載されている「ビール用」については、国内ビールメーカーは、GMを使用していないと明言している。同じ図の右下にある「コーンフレーク」など菓子類は、GM作物を使用した場合は表示義務があるが、店頭で見る限り「GM使用」との表示がないので、GMトウモロコシは現在の段階で使われていないといえる。
また、コーンスターチ業界は、食品へのGMトウモロコシの使用を決めたが、実際に使うかどうかは各メーカーが決めるので、すべてのコーンスターチがGMトウモロコシによるものとはいえない。
しかし、「飲料メーカー大手が、清涼飲料水の甘味料として、遺伝子組み換えしたものが混ざった『不分別』トウモロコシが原料の『異性化糖』を使っている」と「毎日新聞」(09年11月1日)が報じたように、08年の穀物高騰以降、GMへの切り替えが進んでいると推測される。
◆日本の味・醤油に使っても表示義務はなし
大豆でも納豆や豆腐などそのまま加工される食品には、GM作物は使われていないだろうが、サラダ油など食用油、マーガリンなどには使われている可能性はある。
日本の食卓には必ずあるといえる調味料の醤油や油などは、GM大豆を原料に使っていても「組み換えられたDNA及びこれによって生じたたんぱく質が除去・分解され、ひろく認められた最新の検出技術によってもその検出が不可能とされる加工食品」(※2)なので表示義務はない。「遺伝子組み換えでない」ことを表示する商品もあるが、これは他商品との差別化のためではないだろうか。
表示について付け加えれば、GM作物またはこれを原料とする加工食品が、主な原材料(全原材料中重量が上位3位までのもので、かつ5%以上を占めるもの)でない場合には、表示の義務はない。だから清涼飲料水の甘味料にGMトウモロコシ原料の異性化糖を使っていても表示する必要がないわけだ。
◆「GM育ち」の国産食肉・鶏卵・牛乳
しかしなんといっても輸入されるトウモロコシや大豆の用途で大きいのは畜産の飼料だ。
トウモロコシは日本に年間約1600万t輸入され、そのうち約1200万tが畜産の飼料として使われている。
図2は、昨年12月に混合・配合飼料の原料として何がどんな割合で使われていたかみたもの。畜種によって配合割合は異なるが、年度別データでみた平均は、トウモロコシが49.1%、大豆油かす13.2%、ナタネ油カス4.1%などとなっている。綿実油かすは乳業用だけで使われている(※3)。
飼料原料の約半分を占めるトウモロコシは、ほとんどが米国から輸入されている。その米国のトウモロコシ作付面積の約8割はGMだ。だから非遺伝子組み換え(nonGM)トウモロコシを確保するのは難しいし、価格面でもプレミアがつき高くなっている。
それでも07年には約400万tのnonGMトウモロコシを輸入していたが、09年には200万tと半分になってしまった。その最大の要因は、08年の穀物価格の高騰だ。その後、穀物価格は下がったとはいえ、07年以前に比べればまだ高く、プレミアがつきコスト高となるnonGMは敬遠される傾向にあるといえる。
輸入トウモロコシや大豆油かすを食べていても国内で生産されれば国産の豚肉・牛肉・鶏肉であり鶏卵だが、一部の例外を除いてそのほとんどは「GM育ち」だといえる。
そしてGM作物をなんらの形で原料あるいはその一部に使用した食品や調味料が生活の欠かせない一部となってきていることも間違いない事実ではないだろうか。
そのことをどう考えるのか。真剣に検討しなければならない時期にきていると思える。
昨年11月に販売を開始した遺伝子組み換え「青いバラ」は、国内でのGM作物商業栽培への導入部だと考えた方がよいのではないだろうか。
(次回は、世界のGM作物の栽培状況を紹介する予定)
※1)GM食品については01年から安全性審査が法的義務化となり官報に掲載されるようになったが、それ以前も1966年からガイドラインと安全性確認をされ日本に輸入されている。
※2)「食品表示に関する共通Q&A」(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)(厚生労働省・農林水産省)。GM食品の表示については、このQ&Aが詳しい。下記からダウンロードできる
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin16.pdf
※3) 配合飼料供給安定機構のデータから本紙が作成