◇14年間で80倍に拡大
ISAAAが今年2月に発表した「世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する状況 2009年」によると、09年における世界のGM作物の栽培面積は、図1のように、25カ国・1億3400万haと08年より900万ha増加し、過去最高の面積となった。
そしてこれは、GM作物の栽培が始まった1996年の80倍にあたり「GM作物は近代農業史においてもっとも急速に普及した農作物技術といえる」と、ISAAAの創設者で理事会会長のクライブ・ジェームス博士は評価する。
最近は、除草剤耐性と害虫抵抗性など複数の「形質」(特性)をもつ「スタック品種」が増えている。例えば2つの特性を併せ持つスタック品種では、その作物の栽培面積を2倍とカウントする「形質ヘクタール」でみると、08年より1400万ha増加して、09年は1億8000万haになったという。
◇4割は中国・インド・ブラジルなど5カ国で
栽培面積のもっとも大きいのは米国で6400万ha、次いでこの1年で560万haも増えたブラジルの2140万ha、そしてブラジルに抜かれて3位となったアルゼンチンの2130万ha、GMワタの生産が著しく増加したインドが840万ha、次いでカナダの820万haがベスト5となっている。そして中国(370万ha)、パラグアイ(220万ha)、南アフリカ(210万ha)の3国が100万haを超える栽培面積となっている。
栽培面積が5万haを超える国は25カ国中15カ国あるが、EU加盟国でこの中に入っているのは、唯一スペイン(10万ha)だけだ。EU加盟27カ国中6カ国で商業栽培が行われているが、ドイツが09年にGMトウモロコシMon810の作付を中止したため、EU全体での作付面積は、08年に比べ12%減少し、9万4750haとなった。
また、種子輸出市場専用にGM作物栽培を09年から始めたのが中米のコスタリカだ。日本もGMによる「青いバラ」の商業栽培を開始したが、「花卉作物のみの栽培国」であるとして、エピソードとしては紹介されているが、栽培面積などはカウントされていない。
ISAAAの分析によれば、栽培面積の伸びは、米国やEUなど先進工業国の伸び率3%よりも、ブルキナファソ(前年比1353%)、ブラジル(35%)、ボリビア(33%)など中・南米諸国を中心とする発展途上国で13%増と顕著に伸びている。
さらに中国、ブラジル、アルゼンチン、インド、南アフリカというアジア、ラテンアメリカ、アフリカの5大栽培国におけるGM作物栽培面積は、09年で5700万haに達し、すでに世界のGM作付面積の43%を占めており、2015年には発展途上国の栽培面積が先進工業国を追い抜くだろうと予測している。
◇世界のダイズの77%GMに
図2は、1億3400万haに何が作付されているかをみたもので、ダイズが6920万haと52%を占め、トウモロコシ、ワタ、ナタネの4品目で99.6%となり、その他ではテンサイが最近急速に増えてきている。
ダイズの世界全体での栽培面積は9000万haだから、その77%がGMということになる。トウモロコシは同じく1億5800万haの26%、ワタは同3300万haのほぼ半分の49%、ナタネは同3100万haの21%をGMが占めていることになる。
形質(特性)別にみると、除草剤耐性が全体の62%・8360ha(前年7900万ha)を占めもっとも多く作付されている。複数の特性をもつスタック品種もGM作物の21%・2870万ha(同2690万ha)を占めるまでになり、現在11カ国(うち8カ国は発展途上国)で採用されている。そして害虫抵抗性は15%の2170万ha(同1910万ha)となっている。
◇年間10〜15%市場規模は拡大と予測
ISAAAのデータによれば、09年現在でGM作物を栽培する25カ国の人口は、世界の総人口の半数を超える54%・36億人になり、栽培面積は世界の耕地面積150億haの9%を占める。
そして日本のようにGM作物の商業栽培はしていないが輸入を認めている国は栽培している25カ国のほかに32カ国あるという。
また、GM種子の市場規模は09年で105億米ドル(9450億円)。収穫物の市場規模は、トウモロコシ・ダイズ・ワタの合計で1300億米ドル(11兆7000億円、08年)あり、年10〜15%の割合で成長すると見込んでいる。
今年になって、EUが工業用ポテトの栽培を認める一方で、昨年ドイツではGMトウモロコシの作付が中止されたり、インドでは同国初のGM食料生産と期待されていたGMナスの栽培を認めないことを政府が決めるなど、必ずしもGMに追い風だけが吹いているわけではないようだ。だが、お隣の中国は国をあげてGMに取り組もうとしている。
そうしたなかで「農業の6次産業化」をめざす日本はどのような対応をしていくのだろうか。