◆市場ニーズに的確に対応し農薬事業拡大
――保土谷とインドの農薬メーカーの取り合わせと将来を、業界が注目している。
「保土谷UPLは、除草剤に1つの顔をもち農薬メーカーの中でも長い歴史を誇る保土谷化学と、インドの農薬メーカー(世界第12位)であるUPLの合弁事業として2008年3月に設立された。親会社のもつ市場開発力と、多岐にわたる製品群や供給力を最大限生かした市場ニーズへの対応で、日本国内での事業拡大を目指している」
「両親会社のもてるリソースを活用する中で農耕地や緑地管理における地域・作物に密着し、優れた製品・サービスを提案できる企業であり続けたい、がポリシーにある」
◆収益性の高い日本はUPLの戦略市場
――いっぽうの親会社であるUPLは、ジェネリックメーカーとしても世界第3位にいる。
「世界の農薬市場は400億ドルを超えた。その中で、いわゆるジェネリックメーカーとしてはマクテシム・アガン(イスラエル)、ニューファーム(豪州)に次ぐ規模である」
「世界的に農薬市場は、人口増を背景とした農産物需要の増大、穀物高騰による生産意欲の高まりなどで拡大しており、ジェネリックメーカーも、需要の大きい製品を中心に事業を伸ばしている」
「UPLにとって日本は戦略市場と位置づけられているが、いっぽうで成熟市場でもあることから、保土谷UPLを通じてきめ細かい市場開発・普及に取組んでいきたいとの考えだ」
「保土谷UPLの主力品としては、除草剤のDCMU、DBN、CIPC、アージラン、サーフラン、クサレス、殺虫剤のDEP、イソキサチオンなどが挙げられる。その他、植物成長調整剤のカルパーも稲作の省力化・規模拡大に対応するものであり、仕事としての領域がいっそう広がりつつある」
◆参入しやすい海外市場日本はきめ細かな対応
――日本の、ジェネリックに対する考え方の印象は。
「海外では、大型品目を中心に製造・供給が行われており、既に提出されているデータへのアクセスや登録対応のためのタスク・フォースなどもあり、参入しやすい環境にある」
「いっぽう、日本では、特許切れ農薬と言っても市場参入には定められた開発・登録プロセスを踏まねばならない。また、適用内容・流通・製品規格など、きめ細やかに対応しなければならない問題も多く、海外に比べて展開は容易ではないとの印象だ」
「保土谷UPLが供給している製品には、自社および親会社が実績のある優れた農薬の権利を導入し、安全性や環境保全について資料の再整備を行い、農薬登録を維持しているものが多い」
「これを、“ブランドジェネリック”として位置づけ、単なるジェネリクと差別化している。これらは市場価値の高いものが多く、保土谷UPLの機能を有機的に活用して市場の維持・拡大を目指している」
◆問題解決の立場に立ち資源と機能を有効活用
――日本農業やJAグループをどう捉えているか。
「農業所得の向上や生産意欲の拡大に果たすJAの役割は大きく、生産物流通も含めた戦略、地域規模にマッチした日本型農業経営に関する政策支援を今後とも強く引き出していって欲しい」
「そのような中で、保土谷UPLも資材の供給を通じ技術的にも付加価値を提供することで、JAを核とした農業生産の活性化において、少しの一助となるように努めていきたい」
――農薬メーカーとして日本農業に何を、どう提案していくのか。
「保土谷UPLは先ほども話したとおり、農業現場の課題に対し両親会社のサポートを得て、優れた製品サービスを提供していくことが目標にある」
「このようなコンセプトにマッチした製品を流通との協力のもと、早期に市場に投入することで農業現場の活性化につなげていきたい」
《記者の目》
貴方は、インドと聞いて何を連想するだろうか。ニューデリー、インダス、ガンジスの2大河川、モヘンジョダロ、カースト、ルピー、ゼロの発見、ガンジー、穀物生産量2億トン、国花・蓮、堀田善衛。
従来のジェネリックと差別化するため、敢えて“ブランドジェネリック”を提唱する。世界の農薬市場においてオフパテントが80%にも達する中、日本は「海外に比べて展開は容易ではない」と言う。
農薬の安全性、安定性を大前提にジェネリックと本気になって向き合わなければならない時代が来ていることは確かだ。