◆農薬業界で存在感を示せる企業めざして
――協友アグリの5年間の道のりをお聞かせください。
「平成16年(2004年)11月に協友アグリが発足、社名を協友アグリに変えた。その背景には、協友アグリは単に八洲化学の延長線ではなく、新しい会社に生まれ変わるんだというメッセージが込められている。しかし、現実はそうそう甘くなく、設立直後の2年間は10億円以上の赤字を計上するという、経営状態が続いた」
「“誰かが何とかしてくれる”“誰かが助けてくれる”という甘えを捨て、自分たちが必死になって努力することで、社員の行動、会社としてのパフォーマンスも好転すると信じて今日に至っている」
「コスト削減や新規品目の導入により会社の業績は少しずつ上向き赤字状態からは脱却したが、事業基盤は脆弱で、存在感を示せる企業になるという目的からは“いまだ道遠し”の状態で、たゆまぬ努力を積み重ねていく覚悟だ」
――改めて企業理念をお願いします。
「“愚直に現場主義を貫く”を営業部門や普及部門内での合言葉にして農薬の普及に取り組んでいる」
「“愚直に”という発想や行動は、何も営業や普及場面に限った事ではなく、会社経営全般について協友アグリのカラーにしたい。困難に直面しても逃げず、誤魔化さず、言い訳せずに対処することが“愚直”そのものであり、そのような心構えや行動こそが、問題点の把握と適切な対応策につながると考えている。そのような“愚直さ”を継続できれば、お客様や多くの方々からの信頼もいただけると信じている」
――現場主義に徹した普及活動で大切なことはなんでしょうか。
「協友アグリになって、独自性の高い商品のウェートを高くしてきた。当社の独自性の高い商品は自らが、その商品の良さをお客さま知らしめていかなければならない。そのためには、農家の方々のニーズがどこにあるのかをきちんと把握し、それに応えていく必要がある。現場主義に徹した普及活動の基本だ」
「お客様に満足していただくために潜在需要を掘り起こすことに取り組む、質の高い社員を育てること、確保することに取り組んでいるところだ」
――IPM(総合的病害虫管理)の現状と展開は?
「IPMの普及こそ、現場主義に徹した普及活動なしには実現しない。現場の栽培や問題となる病害虫の実情まできちんと把握していなければIPM資材をお客様にお勧めすることすらできないと考える」
「IPMに取り組むということはとりもなおさず“愚直に現場主義を貫く”ことと同義語だと思っている。全国的に成果を誇れる段階にはないが、新しいIPM防除の実践例、成功例が出てきている」
◆問題解決型製品のラインアップ
――主力剤のパフォーマンスはいかがですか。そして、今後の新規開発剤は?
「自社開発の水稲除草剤成分“ピラクロニル”がSU抵抗性雑草を含む難防除雑草に優れた効果を示す事が認められ、高い評価を頂いている。ピラクロニルを配合した当社の主力剤が昨年新発売した“バッチリ”で、2年目の今年は10万ha以上の使用が見込まれる。他メーカー様にも、このピラクロニルを配合した水稲用除草剤を開発、販売して頂いており、バッチリ同様に大きく伸びているようだ」
「ピラクロニルはオモダカやコナギに代表される問題雑草に高い効果を示すのに加え、イネに対する安全性にも優れることから省力性の高い田植え同時処理にも適した除草剤で、ぜひ多くの農家の方にその良さを実感してほしい」
「また、全国の担い手農家様への対応として割安感のある農薬の大型規格が徐々に増えてきている。従来の大型規格は手詰めでの対応が通常だったが協友アグリは、このお客様の要望に応えて昨年10月、山形工場に大型規格の専用設備を新設した。全農様、さらには担い手農家様へのバックアップ体制は、さらに充実させていきたい」
「協友アグリでは独自性を持ちお客様に貢献できる可能性を持つ品目を軸に“愚直な現場普及”を行っている。バッチリを中心としたピラクロニルを含む除草剤以外に以下の重点品目を持っている。水稲分野では微生物種子消毒剤タフブロック、本田散布剤のノンブラス剤、アミスター剤。園芸分野では異なった作用の殺ダニ剤バロックとダニサラバ、殺虫剤ではダントツ剤、IPM分野ではフェロモン製剤のコンフューザー、気門封鎖剤エコピタ液剤、天敵農薬トスパックなどだ。近々、新規の育苗箱処理剤や殺虫剤を導入予定である」
◆農家の需要をきちっと捉え、役に立つ農薬メーカーへ
――系統メーカーとしての役割をどのように捉えていますか。
「具体的には、農家の需要をきちんと吸い上げられる技術力と情報力を持った社員を育成し、IPM商品の普及定着や無人ヘリ防除の拡大に貢献できる系統メーカーとして存在感を示していきたい。“山椒は小粒でもピリリと辛い”と言われるような特長ある会社になり、現場でJA様や農家様から頼られるような存在になれたら、これ以上の幸せはない」
「協友アグリ社員の出自をみると、八洲、三笠、武田、住化、全農と毛色の異なるDNAが混在している。これらの優れたところを引き出して協友DNAをつくりあげられれば、ユニークな系統メーカーになれるという想いで運営している」
【略歴】
(おたかね・としあき)
1952年12月10日、山形県生まれ。75年全農入会。99年肥料農薬部農薬原体課長、2001年同農薬課長、03年同次長、05年同部長・協友アグリ(株)取締役、07年同社代表取締役社長(現在)。
※小高根利明社長「高」の字は正式には旧字体です。
記 者 の 目
第78期(2008年11月〜09年10月)決算を見ると、流通在庫調整により売り上げを若干落としたが、営業利益・純利益ともにほぼ前年並みを堅持した。もっとも注目したいのは、借入金の漸減。17年度の66億円から、21年度には39億円まで絞り込んだ。
前身の八洲化学の創立は1938年なので70有余年の歴史を刻み、業界では老舗に入る。今年16人の若い社員が入社し、協友の新たな歴史を刻む。