シリーズ

食肉流通フロンティア ―全国食肉学校OBの現在

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第7回 お客さんの視点にたって多様な品揃えで店づくり

県内屈指の食肉流通会社
地元の人が屋外バーベキューでまとめ買いも

群馬県庁から渋川方面へ国道17号線を北上し、利根川の河川敷に広がる前橋を代表する敷島公園の入り口をすぎて右折すると、すぐに「肉のデパート 上州ミート」という赤い文字が目に飛び込んでくる。(株)上州ミートの本店だ。店内に入ると正面左手に野菜コーナーがあり、その奥はテナントの酒コーナー。右手の壁に沿って揚げたてのコロッケやトンカツの香ばしい香りがただよう惣菜コーナーがある。入り口からほぼ対角線上にある奥が精肉のコーナーで、その前に低いショーケースが置かれ肉類の冷凍品や加工品が並べられている。

◆県内屈指の食肉流通会社

五十嵐勝治 取締役部長
五十嵐勝治 取締役部長

 群馬県庁から渋川方面へ国道17号線を北上し、利根川の河川敷に広がる前橋を代表する敷島公園の入り口をすぎて右折すると、すぐに「肉のデパート 上州ミート」という赤い文字が目に飛び込んでくる。(株)上州ミートの本店だ。店内に入ると正面左手に野菜コーナーがあり、その奥はテナントの酒コーナー。右手の壁に沿って揚げたてのコロッケやトンカツの香ばしい香りがただよう惣菜コーナーがある。入り口からほぼ対角線上にある奥が精肉のコーナーで、その前に低いショーケースが置かれ肉類の冷凍品や加工品が並べられている。
 五十嵐部長は、この会社の社長で「食肉問屋一筋に40年」という五十嵐修さんの次男で、精肉部門の責任者だ。上州ミートは、精肉部門が本店を含めて2店舗、お兄さんが責任者の「焼肉乃上州」を5店舗、弟さんが責任者の担々麺と陳麻飯の「陳麻家」を2店舗、さらに冷凍コロッケなどの冷食を製造する子会社をそれぞれ県内に展開する群馬県屈指の食肉流通会社である。

◆現場では分からない知識を体系的に学習

上州ミート

 五十嵐さんは学校卒業と同時に、当然のように父親の店で働き出した。食肉に触れ、カット技術の一面は自然に身につくが、それだけでは限界がある。食肉についてもう少し体系的に学んでみたいと考え、平成6年度に全国食肉学校の総合養成科に入学したのだという。5年が経ち21歳になっていた。
 「肉について教科書で勉強するのは初めてだった」が、「現場経験だけでは分からない知識の蓄積とともに、食肉の細かいことまで理解できるようになった」という。店で毎日肉に触れていても「肉をただ漫然と切っているだけ」で、知識も断片的なものばかりで、なかなか体系的に理解することは難しい。学校では技術と知識を一から体系的に教えてもらえるので、現場で得た知識や疑問も体系だって整理できたという。

◆幅広い品揃えで多様な顧客ニーズに応える

 上州ミートの仕事は、店舗での販売だけではなく、卸としての仕事もある。例えば学校給食がある。毎月、決められたメニューにしたがって必要な食肉類を納入するのだが、入札なので「価格はキツイ」けれど、落札できれば数量はそこそこ出るという。その他弁当屋さんにも卸している。
 もちろんお兄さんの焼肉店や弟さんの中華料理店に卸すのも大事な仕事だ。
 本店の店内をみていると、牛・豚・鶏の精肉の他にも実にいろいろな商品が並べられている。
 冷凍の鶏のもみじ(足)やガラ、生肉の豚足やガツ(豚の胃)、牛ミノ(牛の第1胃)、豚ハラミ(横隔膜の背中側の部位)など、普通の精肉店や食品スーパーではなかなかお目にかかれない部位がさまざまに加工されて置かれている。さらに、子会社で作られている冷凍のコロッケやメンチカツなどもある。
 上州ミートは、精肉からこうした各種の部位の加工品まで幅広い品揃えをしている「肉のデパート」だから、一般家庭の他、小料理屋とか小さな居酒屋など近隣の飲食店からのお客も多い。
 精肉では「上州黒毛和牛」の味・品質を「吟味して熟成させた」ものを「どこよりも安く提供している」という。いまお客さんは安全・安心志向なので、豚も含めて「なるべく群馬県産で品揃えしている」という。しかし、「和牛を求める人もいるけれど、安い肉をという人もいる」。そうした多様なニーズに応えていこうと五十嵐部長は考えている。
 群馬県産の他は国産を中心に品揃えはしていくが、「輸入肉でも美味しい肉はある」のだから、安全性などを確認したうえで、輸入肉で品揃えしているものもある。そのことでさまざまなお客のニーズにも応えることができている。

◆地元の人が屋外バーベキューでまとめ買いも

 冒頭に触れたように、本店には野菜・果物から惣菜各種調味料類そして酒類まで売られている。魚以外はすべて揃えられる小型食品スーパーという趣だ。昔は肉だけだったが、「お客さんの要望に応えてきたらこうなってしまった」と五十嵐さんはいう。
 五十嵐さんと話をしていると「お客さんの視点に立って考えている」ということが印象に残る。そのお客目線から生まれたのが「バーベキュー用鉄板の貸し出し」だ。近隣には敷島公園や利根川河川敷があり、春になると仲間が集まって屋外でバーベキューをする人が多い。
 鉄板を貸し出すことで、精肉や串刺しにした肉や加工品そして野菜、酒類とすべてをこの店でまとめ買いすることになる。店の入口にはバーベキュー用の炭が積まれていて「これもけっこう売れるんですよ」と五十嵐さん。
 これからも地元の食肉を中心に、お客さんのニーズに応えた店作りをしていきたいという。

店内の様子

◆学校での貴重な時間を大切に

 最後に、後輩へのメッセージとして、「職場に入ると日々の作業などでなかなか勉強することが難しくなるので、体系的に学べるいい機会だと思って学んだ方がいい。1年間は長いようだけれど、卒業してからの長い人生で、学んだことが役に立つのだから、貴重な時間だといえる。その時間を大切にして欲しい」と語ってくれた。

【著者】五十嵐勝治(総合養成科第30期生 平成6年度)
           (株)上州ミート取締役部長

(2008.04.03)