藤谷教授が会長理事を務める(社)農業開発研修センターは今年創立40周年を迎え、記念事業として『日本農業と農政の新しい展開方向』(藤谷築次編著)、『農協の存在意義と新しい展開方向』(小池恒男編著、近畿農協研究会との共同事業)の2冊を出版した。いずれも気鋭の研究者が農業と農協の現場の分析をふまえて新たな戦略を提言したもの。
前者の副題は「財界農政への決別と新戦略」。単純に農業の国際競争力強化を叫ぶ財界に対して、日本に固有の土地条件、社会条件などをふまえない空想的改革論と批判している。そうした競争力強化、効率化大幅可能論に翻弄されたままでは日本農業は崩壊すると警告し、自給率向上など農業に関心が高まっている今、「本物の農政」を実現するための国民合意形成の場づくりこそ必要だと説く。
後者の副題は「他律的改革への決別と新提言」。これまでの農協組織の改革成果と課題を分析。巻末には藤谷教授が「新しい農協運動のデッサン」と題して「農協運動の使命の明確な認識を」など10の提言を執筆した。
連載はこれら著作の成果をもとに、国民合意形成に向けた農協の農政運動のあり方論、厳しい環境のなかで求められる事業・組織、経営改革論と、それらを可能にするトップのあり方論などが語られる。
「農協運営の厳しさを現場から聞く。確かに対応力が問われる時代だが、そのためにはその原因と背景の分析がきわめて重要である。主体的な改革による打開策を探り提言していきたい」と藤谷教授は話す。
ご期待ください。
京大名誉教授