◆すべての病気は食べ過ぎに起因する
前回は「何を食べるか」も重要だけれども、ある意味ではそれ以上に「どのように食べるか」が大事という話でした。「どのように」の中には「食べる量」「食べるスピード」も含まれています。 長命のお年寄りは概して好き嫌いなくなんでも食べる一方で、ほぼ全員に共通しているのが「腹八分目を続けてきた」ということです。食べすぎないことが長命の秘訣なのでしょう。昔から「腹八分目、医者知らず」と言われてきたことはたぶんご存じですね。 美食と飽食は人生最高のぜいたくのように思いがちですが、私も腹八分目をできる限り守るようにしています。女房に「あまりおいしい料理を作らないでね。食べすぎてしまうから」と冗談を言っています。とはいえ「おいしいね」と言いながら食べるのが習慣になってはいるのですが。 桜沢如一さんというマクロビオティクス(長寿食養法)の専門家は、すべての病気は食べすぎに起因するといって過言ではない、「その証拠に、豊年には病人が多く、凶作や戦時には病人が少ない」と言っています。 これはとても面白い意見です。昔は栄養不足のおかげで結核になったり病気に対する抵抗力が落ちる人も多かったのですが、そして今、飢えからくる病気の蔓延に苦しむ国々も少なくないのですが、今日の日本に関する限り、飽食による害のほうが圧倒的に大きいといえるでしょう。 過食大食が良くないのは、カロリー、蛋白、脂肪、塩分その他を過剰に摂取してしまい、体内にそれらを溜め込み、あるいは消化、排出するために臓器に負担をかけてしまうからです。 特にカロリー、蛋白、脂肪の過剰摂取はいわゆるぜいたく病、現代病を引き起こして、糖尿病、痛風、心筋梗塞、脳卒中、その他、循環器、消化器系統の万病につながります。 だから「もう少し」「あと一杯」というところでやめることが大事です。特に、たくさん酒を飲んだら最後の茶漬けは我慢すること。仕上げにラーメン屋へ、などというのは最悪です。 食べすぎない、飲みすぎないのが体に良いとはわかっていても、そう簡単ではない、と言われそうですが、方法がないわけではありません。
◆おしゃべりしながらよく噛むこと
まだ満腹感がない、もっと食べたいと感じるのは、胃が実際に満杯になったかどうかによるのではありません。胃から脳へ満腹感という信号が行くかどうかなのです。 ですから脳へ「ああ、よく食べたなあ」という信号が行かない間は、まだまだ食べたいと思ってしまう。ということは満腹になる前に「満腹信号」が脳に行くようにすればよい。あるいは満腹になってもまだ「満腹信号」が脳に行かないことがないようにすればよいわけですね。 そのためには、まずよく噛むこと。口に入れたものは、少なくとも30回噛むのを習慣にする。ラーメン、そば、うどん、スパゲティなどは噛まずにつるつると飲み込んでしまうので、いくら食べても満腹感が出にくいきらいがあります。 子供たちや若者たちはカレー、スパゲティ、ハンバーグ、スナック類などあまり噛まないで飲み込める食べ物が好きだと言われますが、これも満腹感につながらずに子供の肥満を引き起こしている理由の1つだと思います。 柔らかいスナック菓子などほとんど噛むこともなくぽりぽりいくら食べてもおなかが一杯になりません。ついでにいうと、スナック菓子には大量の塩分、糖分、リンが含まれていて、その過剰摂取が子供の健康を損ねていると知り合いの医者が警告していました。 昔は沢庵やスルメのように、噛むのに骨の折れる食品がたくさんありました。こうした歯ごたえのある食品は、過食を防ぐという点で重要ですが、よく噛むことはあごの筋肉を発達させ、脳の活性化にも効果があります。この点はとても重要なことでいずれ詳しく述べてみたいと思います。 もうひとつ、過食大食を防ぐ方法は、おしゃべりをしながらゆっくり食べることです。少しずつゆっくり食べていると、脳へは「食べた信号」がどんどん届いて、食べすぎる前に「ああ、よく食べた」と感じることができるのです。 そもそもおしゃべりをして楽しく食べることは消化、吸収にも効果的で、一石二鳥であることは医学的にも確かめられています。孤食個食やテレビ見ながらほとんど噛みもせずにかき込む食事は健康的食生活とは対極にあります。食事は楽しくゆっくりが大事です。これが「医食同源」の大事な要素でもあります。
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