シリーズ

「食は医力」

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第5回 微少ミネラル豊かな食生活を見直そう

微量だけれど大きい生理学的意味
亜鉛が足りないと理由不明な体調不良に
「イライラ」はカルシウムなどの不足から

 小学校2年生ぐらいだったか、終戦後の衣も食もまだ貧しい時代でしたが、両親は健康と栄養素の話を時々してくれたものでした。蛋白質、脂肪、含水炭素、ビタミン、カルシウムが大事だということを子供心に刻み、夏休みの宿題に「栄養素で見た食事日記」という円グラフを作って先生に提出しました。
 その際、ヨードという栄養素について、海草を食べたとき円グラフの小さなスペースを茶色(だったか?)に塗ったのが記憶に残っています。ヨードは今、栄養素としてはヨウ素としてまれに取り上げられる程度ですが、親は海草を食べることの重要さを言おうとしたのでしょう。

◆微量だけれど大きい生理学的意味

 小学校2年生ぐらいだったか、終戦後の衣も食もまだ貧しい時代でしたが、両親は健康と栄養素の話を時々してくれたものでした。蛋白質、脂肪、含水炭素、ビタミン、カルシウムが大事だということを子供心に刻み、夏休みの宿題に「栄養素で見た食事日記」という円グラフを作って先生に提出しました。
 その際、ヨードという栄養素について、海草を食べたとき円グラフの小さなスペースを茶色(だったか?)に塗ったのが記憶に残っています。ヨードは今、栄養素としてはヨウ素としてまれに取り上げられる程度ですが、親は海草を食べることの重要さを言おうとしたのでしょう。
 今回、お話しようとすることは海草など海産物に特に多く含まれる微少ミネラルの重要性についてです。具体的には、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、マンガン、コバルト、ナトリウム、カリウム、リン、セレン、ヨウ素など、無機質と呼ばれるものを総称して言います。
 以前、百科事典を見ていて首を傾げたことがありました。ミネラルについてこんなふうに書かれていたからです。「いずれも微量であるが生理学的意味は大きい」。ここまでは良いのですが、問題はそのあと。「栄養学で重要なのはカルシウムと鉄で、その他は普通の食品に必要量が十分に含まれている」(ブリタニカ百科辞典)。
 ここで「重要」とされているカルシウムですが、不足すると骨や歯の疾患を引き起こし、特に子供や老人では深刻な事態となります。小魚、海草、ゴマ、乳製品に多いことはご存じでしょう。
 鉄分も、不足すると貧血のほか疲れやすくなります。やはり小魚、海草、ゴマのほか、きな粉やきくらげなどに豊富に含まれています。

◆亜鉛が足りないと理由不明な体調不良に

 それではカルシウムと鉄以外の微少ミネラルはどうなのか。問題は百科辞典の「普通の食品」という表現です。伝統的な食材をバランスよくいただいていれば、「必要量が十分に含まれている」「普通の食品」に該当するでしょう。
 しかし、現代の食事は「普通」とはいえない食品で構成されていることが多いのではないか。そうすると必然的に微少ミネラルが不足することになりかねません。
 朝はトーストにコーヒー、昼や夜はラーメン、ハンバーグ、エビフライ、チキン空揚げ、ポテトチップスといった食事が続き、合間には清涼飲料水や揚げ菓子の間食ときては、微少ミネラルを体内に取り込む余地はほとんどないでしょう。
 現実に微少ミネラルが不足した結果と見られる兆候を見出すことは難しくありません。端的な不足症状は理由のはっきりしない体調不良でしょう。「どうも体調がすぐれない」とか「最近、なんとなく元気が出ない」などというのがそれです。
 こういう症状は医者へ行っても適当な処方がしにくいので、ビタミン薬か何かを与えられて「しばらく様子を見ましょう」ということで終わってしまうことが多い。せいぜい「不定愁訴」という病名をいただくくらいのことです。
 微少ミネラルのうち亜鉛の不足は、こうした症状と特にかかわりが深いとも考えられています。しかも亜鉛は、不足すると味覚が衰えて味がわかりにくくなります。だからますます合成調味料を使った濃い料理、揚げ物、激辛料理を好むようになり、薄味の上品な野菜料理、海草料理などお呼びでなくなってしまう。食の悪循環になります。

◆「イライラ」はカルシウムなどの不足から

 カルシウム、マグネシウムなどは神経の興奮を抑える働きがあるので、その不足が昨今のイライラ世相と関係が深いと私は疑っています。「子供が最近、切れやすくなった」「連れ合いが最近、イライラしている」と思ったら、これらミネラルの多い食事を心掛けると効果があるはず。わが家はミネラルたっぷりで、効果はまずまず・・です。
 緑黄野菜、小魚、牡蠣、海草、ゴマ、大豆。これらはイライラ症には最適ですが、特に牡蠣殻も入れた牡蠣鍋は精神安定の特効薬といってもよいでしょう。
 海草や魚介類など海産物に微少ミネラルが多量かつ満遍なく含まれているのは、古来、多様なミネラルが溶け込んでいる海の恩恵を海産物が受け入れているからです。
 食べ方の点でもわいわいと楽しく食べることで、副交感神経が働いて、精神をリラックスさせてくれます。凶暴な言動に走る人たち、突然、怒り出す老人が増えている背景には、「貧しい食生活」つまり孤食や偏食があります。今なら、まだその流れを食い止めることができるはずです。ミネラルを含め足元から食を見直していきたいものです。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2009.05.13)