◇舌だけではなく目でも楽しむ
色とりどりだから食べ物はおいしい。食べ物は舌で味わうだけでなく、目でも楽しむからこそ奥が深いのでしょう。実は、この食物の色は食の性質と深くかかわっていて、楽しむ以上に重要な意味をもっています。
私の学んだマクロビオティクス(食養理論)によると、赤や黄色は陽性、緑や青は陰性と言われていました。前回、述べたように陽性は体を温め、陰性は冷やす働きをします。
もちろん、すべてがそのように単純ではありません。赤系統のスイカや熱帯フルーツは陽性でなく陰性です。
しかし冬の緑の葉物野菜は加熱するか塩漬けにして陽性化し、青紫のナスは陰性すぎるので秋には嫁に食べさせない、などというのは先祖様の知恵といえるでしょう。
◇黒い食品と白い食品
では黒と白はどうか。黒い食品といっても、外側が黒くて中は茶色のものが多いですが、夏ばて防止の力があったり、冬に体を温める効用もあります。
「土用には黒いものを食べよ」という言い伝えもあり、昔は黒い食品をよく食べていたようです。ウナギ、ドジョウ、鯉などは土用に食べる典型的なもので、シジミも殻は真っ黒です。
あるいは雑穀、黒ゴマ、黒豆、ヒジキ、ごぼう、きくらげ、黒砂糖、黒パンなど、黒い食品は、良質の蛋白質とビタミン、微量ミネラルを豊富に含んでいて、健康に良いものが多いようです。
これに対して白い食品には、お勧めしたくないものが並びます。白米、真っ白なパンやめん類。それに白砂糖。真っ白なのは、一般に精白して表皮などすっかり捨ててしまっているからです。
真っ白に磨き上げたコメ、麦は、ご飯、パン、めん類、どれも喉越しがよく、砂糖、塩などの調味料も上品な味が楽しめるとして昔から上級武士、上流階級に好まれてきました。
◇表皮にビタミンやミネラルが
しかし、表皮にこそビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれているわけで、真っ白なコメや粉にはでんぷん(炭水化物)のカロリーは残されていても、ビタミンやミネラルは極端に少なくなっています。
副食でそれらの希少栄養素を補えばいいという考え方もありますが、白米、白パン(ほとんどのパンが事実上の白パンなのです)には、食後血糖値を急激に高める働きがあり、特に糖尿病の心配がある場合は避けたほうが無難です。
玄米は調理しにくい、あるいは食べにくいというのであれば、七分づきか五分づきの胚芽米にすればよく、パンも全粒粉パンが手に入る場合もあります。
ところで、「白米は粕(かす)だ」とか「米に康(達者)と書くと(栄養価の高い)糠(ぬか)になる」とか言われますが、話としての面白さはともかく、字義としての正しさは私としては保証しかねるところです。
◇健康には丸ごと食べる方が
それよりも、食品は全体食が好ましいことを頭に入れておきましょう。即ち、残留農薬が心配でない範囲なら、穀類も果物も根菜も表皮を取り除きすぎないでできるだけ食べるほうがいい。あるいは食物連鎖の心配のないイワシくらいの小魚であれば、丸ごと食べてしまうほうがいいのです。
砂糖も、黒糖や三温糖を使うほうがミネラルは豊富だし、清涼飲料や菓子類の飲みすぎ食べすぎで生じる「白砂糖症候群」に陥らずにすみます。
江戸時代、白米を常食した江戸詰めの武士が脚気になった「江戸患い」を笑ってなどいられません。それどころか現代の「精白患い」はずっと深刻なようです。
話は飛びますが、漂白剤や洗剤で真っ白になった里芋、シャツ、お皿をありがたがるのでなく、食品も衣類も食器も黒っぽいくらいが安全かつ健康にいいというのがわが家のモットーです。料理、洗濯、食器洗い、みなそのほうが楽なことでもあるし。
経済倶楽部理事長