◆良い意味・大事な意味で使われる「骨」
前回は歯の話でしたが、似たもの同士の骨について今回は触れてみましょう。
昔から「骨」はほとんどが良い意味、大事な意味で使われてきました。「骨折る」は努力する意味だし、「骨太の方針」といえば内容がしっかりしているという意味ですから、小泉政権が多用したのは実は自画自賛だったことになります。
骨っぽい魚は好まれませんが、骨っぽい男は誉め言葉です。骨抜きは魚料理にはよくても、言われた当人はありがたくない表現ですね。
面白いことに、骨にまつわる格言はほとんど皆無です。食のことわざで胃腸がらみは圧倒的に多いのに、なぜ骨折や関節の痛みなどにかかわることわざがつくられなかったのか。
たぶん、江戸時代の日本では骨の研究があまり進んでおらず、胃の腑や心の臓などといった内臓に比べ、格言をつくるところまで医学の知識は進んでいなかったのでしょう。
しかし、明治以降は研究が大いに進み、今日、カルシウムが骨を支える栄養素であることは誰でも知っています。
◆ヨーグルトと小魚でカルシウムを
カルシウムをいちばん取りやすい食品は牛乳と小魚ですが、日本人は牛乳を消化する酵素が少ないため腹をこわしてしまう人が多いようです。その場合の代用は、ヨーグルトが一番でしょう。
わが家もヨーグルトは毎朝、常食しており、おかげで骨太な骨を保っています(自慢風で恐縮ですが、実際、ついぞ骨折を経験したことはなく、家人ともども骨粗しょう症にもならずにすんでいます)。
ヨーグルトの食べ方ですが、(安物の)抹茶の粉をたっぷりふりかけ、黒豆、ブルーベリーのジャムなどを添えると、彩りも良く、いくらでも食べられる気がしてきます。
小魚は、ちりめんじゃこやしらすの大根おろし添えなどの料理のほか、ナッツと混ぜたつまみもよく食べます(ナッツも貴重なミネラルの供給源です)。その際、カルシウム吸収に欠かせないのがビタミンDで、魚の内臓、卵黄、椎茸に豊富に含まれています。
◆モズクやメカブなど海草も大事
最近わかってきたことの1つに、さまざまな微少ミネラルとビタミンが骨を強化し、骨粗しょう症を防ぐ、という事実があります。
具体的にはボロン、マグネシウム、マンガンなどで、微少ミネラルの宝庫は海草や牡蠣などの海産物です。モズク、メカブ、昆布など海草を積極的に食卓に載せるようにしましょう。
ある財界人は、奥様が拙著『食は医力』を読んで、毎食必ずモズクを出してくるようになったと苦笑しておられましたが、昨年、溝に脚を突っ込んで骨折してしまいました。海草は大事ですが、足元には気をつけないといけません。
骨がしっかりするためには、運動も大事です。寝たきりなどで運動をしないと骨が弱くなっていくことは臨床的にもはっきりしていることで、適度な運動が骨を強めてくれます。
◆若者にも増えている骨粗しょう症
宇宙飛行士は、宇宙から帰還すると骨が弱くなっていて骨折に至りがちだと言われています。宇宙空間でいくら運動しているつもりでも、重力がない状態では骨にとっては運動していないと同じことなのです。それほど骨と運動は深くかかわっています。
ところで過去50年間、先進国で最も急速に増えている病気の1つに骨粗しょう症があります。骨粗しょう症は骨の内部がすかすかになって、折れやすくなる病気です。
若者でもこの症状が増え始めているようで、特に中高年の女性は気をつけないといけません。「日ごろの注意が肝心」はまさに骨粗しょう症に当てはまります。
(1)女性、(2)中年以上である、(3)多産だった、(4)大柄でない、(5)肉が好きで野菜、海草が少ない、(6)運動をあまりしない。このうち3項目以上が当てはまる方は、骨粗しょう症を用心すべきでしょう。
経済倶楽部理事長