◆食事と深く関わる“夏ばて”
今年は歴史的な猛暑でしたが、暑さ負けの後遺症を考えるにつけても、まだ体調維持に気は許せません。残暑厳しき折、今回は暑さと体について考えてみることにしましょう。
基本的に人は体を冷やすことで病気になりやすいわけですから、暑さで体温が上がれば免疫力は基本的には維持されます。ただ熱中症はもちろん、夏ばてという体力低下にも気をつけないといけないので、対策を考える必要があります。
熱中症は暑さそのものによる急性症状ですから、風通しの良い涼しい場所で体調維持と水分補給を心掛ければ問題は少ないですが、夏ばてのほうは基本的に食事と深くかかわっています。
夏ばては夏負けの俗な言い方だそうで、愛用の『新明解国語辞典』を引くと「夏の暑さで ひどく疲れ、何をする元気も無い状態」とあります。「この夏は毎日がこの定義どおりだ」などという方のために良い知恵をご披露しましょう。
◆飲むほどに水分不足になるビール
第1のカギは水分補給です。夏ほど水分が強い味方になる季節はありません。体から水分がどんどん出ていくので、補給しないと脱水症状が起きて動きたくなくなります。
体内に水分が十分あると発汗も盛んに行われて体温が下がります。尿からの排毒も促進されるので、のどが渇いたと思ったらこまめに補給しましょう。
清涼飲料は飲みすぎの害(糖分、合成物質など)に気をつける必要があり、野菜や果物などから水分を摂取することも重要です。
ビールで水分補給というのは誤解されがちですが、ビールは利尿作用が強く、飲めば飲むほど水分不足になってしまうので要注意です。
カンカン照りのゴルフ場で、昼食時に大ジョッキで「とりあえず乾杯」などとやっているのは危ない。私も妻から厳しく言われて、ラウンド終了後まで我慢するのが普通です。
第2のカギは、良質の蛋白質や含水炭素を補給することです。暑いと食欲がないといってあっさりしたもので済まそうとしますが、穀類、肉、卵、魚介類、大豆製品などをバランスよく取ることが大事です。
わが家では夏は枝豆と冷奴が毎晩、それも大量に登場し、朝の納豆とともに蛋白質に不足はないはずで、夏ばてから無縁なのはこのためではないかと秘かに思っています。
◆夏は生野菜と“黒いもの”がお勧め
第3に重要なのがビタミン、ミネラルです。なかでもビタミンAやBは疲労回復に効果があるとされています。
豚肉、レバー、大豆製品、緑黄色野菜が夏にいいのはそのためで、土用のウナギもビタミンなど知らなかった昔から生活の知恵として珍重してきました。
ビタミン、ミネラルというと、やはり野菜、果物、海草をたっぷり取ることが夏ばて対策につながります。
夏には体を冷やす陰性食物を多めにとることも効果的でしょう。キュウリ、ナス、トマト、スイカ、桃、パイナップル、マンゴーなどは、体を冷やす働きがあります。野菜、果物とも生食のほうが陰性の度合いは高いので、前回述べた酵素の働きもあり、夏は生がお勧めです。
「土用には黒いものを食べよ」という言い伝えがあるので最後に黒い食物に注目してみましょう。
土用のウナギ、ナマズ、ドジョウはみな黒いし、シジミも夏ばてに効果があります(どれも身は黒くないけれど、皮や殻が黒いところで黒い仲間に入れることにして)。
黒ゴマ、黒豆、キクラゲ、ヒジキ、黒い食品は面白いことにみなビタミンAやBが豊富にあるので、代謝や脂質の取り込みに一役買ってくれます。
暑い暑いといって冷やそうめんだけですまさずに、副食もしっかり取りましょう。夏ばて対策の成果はしっかり収めて食欲の秋を迎えるようにしたいものです。
経済倶楽部理事長