シリーズ

「食は医力」

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第21回 塩は本当に悪者なのか?

・減塩ブームでも減らぬ高血圧症
・塩分摂って寒さに打ち勝つイヌイット
・塩田塩と純粋塩(Nacl)とは別物
・ナトリウム過多になるスナックなどの取りすぎ

「敵に塩を送る」と言われたくらい重要だった塩が、近年、高血圧の元凶のように言われ減塩ブームが続いています。
 塩が悪者となったきっかけは60年前に遡ります。アメリカの学者がネズミを使った実験で、塩分を多く摂らせた10匹のうち4匹が高血圧になったと発表したのです・・・。

◆減塩ブームでも減らぬ高血圧症

 「敵に塩を送る」と言われたくらい重要だった塩が、近年、高血圧の元凶のように言われ減塩ブームが続いています。
 塩が悪者となったきっかけは60年前に遡ります。アメリカの学者がネズミを使った実験で、塩分を多く摂らせた10匹のうち4匹が高血圧になったと発表したのです。
 それから10年ほどして別のアメリカの学者が日本にやってきました。そして、東北地方と南日本とを比較し、高血圧の発症率と食塩の摂取量を調べたのです。
 その結果、食塩を1日平均27グラムも摂っている東北地方に高血圧が多いという因果関係を指摘したことが減塩運動に火をつけました。
 しかし、減塩さえすれば高血圧が減るほど話は簡単か。私はかねて疑問を抱いています。というのも、これだけ減塩指導が広まっているのに、高血圧症の人はいっこうに減る気配がないからです。
 私の推測する高血圧の原因は3つあります。(1)血管の内壁に脂肪やコレステロールが付着して血液が通りにくくなっている場合。(2)血液の粘稠性が高まり流れにくくなっている場合。(3)ナトリウム過多の食事により体が陽性になりすぎている場合。
 このような場合には心臓が平常以上にがんばって血圧を上げることになります。そうすることで血液は末端の毛細血管、そして脳内へと必要量が流れ込むことになります。(3)の場合はたぶん赤ら顔になるでしょう。

◆塩分摂って寒さに打ち勝つイヌイット

 塩の過剰が望ましくないといっても、高温多湿の日本では塩分は汗や尿から適切に排出されていて、むしろ不足している場合すら少なくありません。冬の北国では塩分で体を温めようとして塩分摂取が多めになるのです。
 ちなみに極北に住むイヌイットは、生肉主体でナトリウム(塩分)をたっぷり摂って寒さに打ち勝っています。
 厚労省や医師の大半は高血圧=塩分犯人説ですけれど、私の信頼する帯津良一、安保徹、森下敬一、石原結實といった先生方はみな否定的で、もっと食全体から考えていくべきだと主張しています。
 どんな食事によって高血圧を防ぐかという話の前に、確認しておきたいことがひとつあります。

◆塩田塩と純粋塩(Nacl)とは別物

 一般に塩といえば塩化ナトリウム、昔、学校で習ったNaclを連想する方が多いでしょう。イオン交換膜で作られた、まさにNaclしか含まない純粋塩しか専売法により売ってはいけない時代が続きました。
 実はこれが日本人の健康を損ねたと私はにらんでいます。そして今でも加工食品や外食には、安いこの純粋塩が使われていて、不健康の原因となっています。
 しかし、塩田や岩塩から作られる本来の塩には、塩化ナトリウムだけでなく、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄、その他多くの微少ミネラルが含まれています。同じ塩でもNaclだけの純粋塩とは全くの別物です。
 この本来の塩を常識の範囲において取り込んでいる限りにおいては、それが即、高血圧を引き起こすことはないという考え方が国際的に認められつつあります。

◆ナトリウム過多になるスナックなどの取りすぎ

 塩よりも、むしろ肉類、スナック食品など菓子類、清涼飲料水、インスタント食品などを取りすぎることのほうが問題なのです。その結果、ナトリウム過多になり、腎臓障害が引き起こされます。
 腎臓が悪いと血圧が上がるし、高血圧になると腎臓病が引き起こされる。この両者はニワトリと卵の関係にあります。そのようにして前記(1)(2)(3)が引き起こされ高血圧になっていくのです。
 ですからカリウムの多い野菜、キノコ、海草、果物を十分摂ることや、穀物(できれば精製度の高くないもの)を適切にいただくことで血圧は好ましい範囲に収まっていくと考えられます。ルチンの多いソバも血圧を下げる働きがあります。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2010.11.15)