◆米国では1000を超える豆腐製造所が
近所の酒屋さんに熊本で作られている豆酩(とうべい)という名の面白い豆腐があったので買って帰りました。豆腐をもろみにつけて発酵させたものだそうで、シソの葉とノリで巻いて食べたら和風チーズの趣があって絶品でした。
湯豆腐に味噌感覚でも使えるし、いろいろな料理の調味に使えるところはたいしたもので、わが家の常備品になりそうです。
世界に通用する日本料理の筆頭はスシや天ぷらですが、素材でいえば豆腐でしょう。Tofuは大抵の国で通用します。
欧米ではステーキ、サラダ、ハンバーグ、デザート、アイスクリームなど、日本人がエッと思うような使われ方がされています。アメリカには大小1000を超える豆腐製造所があるそうです。
中国や東南アジアにも豆腐の仲間がいろいろありますけれども、日本の豆腐の色合い、食感、清潔さ、料理への汎用性はずば抜けてすばらしいものがあります。汎用性は豆腐自体にクセがないため、調理法も調味料も選ばないところにあるのでしょう。
◆良質な蛋白質の宝庫
豆腐が優れているのは、畑の肉と言われる原料大豆の力に負うところが大きいのですが、良質の蛋白質が豊富なことが何より重要です。仲間うちの納豆、味噌、枝豆、きな粉同様に、豆腐は蛋白質の宝庫なのです。
良質の脂肪(不飽和脂肪酸)もたっぷりあります。ビタミンも同様です。そしてミネラルも。特にカルシウムが多い。これだけすべてそろっている食品は、まさに完全食品の名にふさわしいといえるでしょう。
大豆そのもののカロリーは必ずしも少ないとはいえませんが、豆腐は水分が多いだけカロリー過多になる心配は少ない。むしろ蛋白質、ビタミン、ミネラルの豊富なことからすれば、最適のダイエット食品のひとつといっても過言ではないでしょう。
健康という点からは、血管を強くする、悪玉コレステロール値を下げる、脳の老化防止に役立つ、などさまざまな働きが期待できます。
◆食物繊維が豊富な“おから”も
鍋でも炒め物でも揚げ物でも煮物でもなんでも豆腐を使いましょう。冷奴(ひややっこ)単独でももちろんいい。
わが家では肉魚はなくとも豆腐だけは食卓に必ず顔を出します。その効果はいろいろ現れている、と思っているのですが、人には言わずにいます。
ところで豆腐の仲間はいっぱいあります。がんもどき、厚揚げ、油揚げ、凍り豆腐、湯葉、おから、豆乳。ただし胡麻豆腐は白ゴマと葛粉で作るもので大豆の豆腐とは異質です。
この中で特に捨てがたいのはおからです。栄養価は豆腐とほぼ同じで、食物繊維はずっと多い。それなのに昨今、ほとんどは動物の餌に回されてしまい、人間の食用にはほとんどされていないのです。本当にもったいないことです。
野菜や魚介類などを加えることでおからは立派な惣菜になります。味付けいかんでこんなにおいしくなり、健康に良くて、しかも安い食べ物は知りません。最近はおからクッキーなども作られていますが、ぜひ食卓に載せたいものです。
◆豆腐と納豆の不思議
豆腐で大事なのは(1)大豆が国産である、(2)本にがりを使っている、(3)水が優れている、などです。買うときは以上を確かめてください。水は軟水がいいのですが、表示からはわからないので、地元に近いところの豆腐で(1)と(2)を確認すれば十分でしょう。
ところで豆が腐るのが豆腐というのはどうも変ですね。むしろ納豆こそが豆腐ではないか。
そういえば納豆は豆が収(納)まるというけれど、大豆の煮汁に苦汁(にがり)を加えることでまた固形体に収まる、というのは豆腐の説明にぴったりです。どこかで入れ違ったのではないか。豆腐や納豆を食べるたびに首をひねっています。
経済倶楽部理事長