◆白米の植物繊維は玄米の半分以下
「黒い食物」には2種類あります。ひとつは穀類を中心に精白、精製しないために黒っぽいもの。玄米、玄麦が代表的なものです。
もうひとつはもともと黒っぽい食物で、ウナギやドジョウのように外側だけ黒いものとヒジキのように中まで黒いものとあります。
白い米や麦は、精白という言葉のとおり、米や麦をついて表皮を取り除き白くすることでのど越しが良くなります。
寿司職人が握るのはぴかぴかの白米でなければいけません。カツ丼もうな重も白米に限ります。日本人の多くが白米ご飯こそ日本食の華と考えてきました。
ということで白米はおいしいけれど、表皮と胚芽部分に含まれるB1、B2、ナイアシン、Eなどのビタミン、鉄分やカルシウムなどのミネラル、さらに食物繊維などは玄米に比べ半減から10分の1くらいになってしまうので、栄養的にはものたりません。
江戸時代に白米食で脚気になる江戸詰めの武士が続出したので、これを「江戸患い」と呼んだそうですが、野菜や海藻不足だと今でも体調を損なうことになるので注意が肝心です。
玄米はやや食べにくいのと肉など脂っこい副食と合わないので、五分づき七分づきなどの胚芽米にするか、大麦や雑穀を好みに合わせて混ぜるといいでしょう。そうすればビタミンやミネラルの心配は減ります。
◆消化もよい麦飯にトロロ汁
特に大麦や燕麦は精白しにくい部分が残るので、栄養的には優れているといわれてきました。わが家の朝食は燕麦(オートミール)に味噌汁、納豆です。
大麦を使った麦トロご飯は今でも人気は高いですが、黒っぽい麦飯でも、さっぱりした食感の麦がトロロ汁と合って、のど越しに抵抗がありません。消化もよくて食傷しないというのが定説です。
パンも、黒パンや胚芽パン、全粒粉パンのほうが栄養面では白パンよりも優れています。
そばも、表皮の残った藪そばは色が黒っぽく、そばの実の中心だけで作った更科そばは白くて上品さでは上。そこは好みですが、栄養だけからいうと藪のほうが少し優勢というところでしょうか。
砂糖も黒と白があります。精製しない黒砂糖はミネラルがたっぷりですが、あっさりした白砂糖がいいという人のほうが圧倒的でしょう。
コーヒー、紅茶はほとんど白砂糖が使われ、時折見かける茶色のざらめは一般にキャラメルで色づけした白砂糖です。
白砂糖はクセがなくとも依存症になりやすい点、注意がいります。わが家は白砂糖は使わず、どうしてもというときは黒砂糖か三温糖を使っています。
このように穀物、砂糖は白よりは黒のほうが総合的には優れています。食卓に未精白のものも登場させたいものです。
◆土用にはくろいものを食べよ
もうひとつの黒っぽい食物のほうですが、一般にミネラルやビタミンが豊富で、夏バテ対策に優れているほか、冬に体を温めるものも多く、季節を問わぬ優れた食品群です。
「土用には黒いものを食べよ」という言い伝えもあります。土用に黒い食物で夏バテを防ごうというのはウナギに限りません。ドジョウでもよく、シジミは黒いのは殻だけですが「土用シジミは腹薬」というほど肝臓を強めて体調回復に力があります。昔は冬の土用も季節の境目でしたから、冬の食べ物も大事にされていたのです。
ゴボウ、昆布、海苔、ヒジキ、キクラゲも黒くて、どれもミネラル豊富だし、いかにも体調を整えてくれるような気がしてきませんか。
昔は色白美人だとか七難隠すなどと言いましたが、近年は皮膚に色素が多いほど有害な紫外線に強いというので、色黒の良さが見直されています。パリコレで黒が風靡した年もありました。ということで黒い食べ物の力も再認識、というのは牽強付会・・・にしても食物の黒はやはり大事です。
経済倶楽部理事長