◆緑茶は日本固有の飲み物
埼玉や神奈川産の茶葉に基準値を超えるセシウムが検出されたというので、今後、静岡産の茶葉にどんな数値が出るか、関係者は息を詰めて見守っています。
厚労省は荒茶(採取した葉を蒸気加熱後、乾燥させたもの)で測定しているのですが、生産者は飲料段階で測定すべきだとの主張です。
確かに、荒茶をそのまま食べるわけでもないのだから荒茶の数値で判断するのはおかしいという主張も一理あります。
しかし「高度に汚染された荒茶葉を店頭に並べるなど論外で、あってはならないことだ」というのが厚労省の言い分で、今は厚労省には誰も勝てません。
そこで今日は日本茶の「応援歌」になればということで・・・。ご存じのとおり、茶葉を発酵させたのが紅茶、半発酵がウーロン茶で、緑茶は発酵させない日本固有の「日本茶」です。
◆ポリフェノールやビタミンCが豊富
発酵させないため緑色が残り、紅茶にはない豊富な含有物質が強みとなります。フラボノイド、ビタミンC、カフェイン、ポリフェノールなどがそれです。
まず茶のビタミンCですが、Cは熱に弱いという常識を覆し、80度以下の煎茶、番茶ではあまり壊れません。そのほか利尿作用、カフェインによる覚醒作用なども重要です。
ポリフェノールは健康にいいというので赤ワインブームが起きたことがありました。とはいえタンニン、カテキンなど緑茶に多い成分もポリフェノールの仲間なので、無理してアルコールを飲まずとも緑茶で十分というのはありがたいことです。
このため高血圧を抑える、血糖値を下げる、動脈硬化を止める、など脳や心臓の疾患に心強い味方であるうえに、ガン抑制にも効果があるようです。
◆ワンダー・オブ・シズオカ
学問的根拠はさておき、面白いデータがあります。第一に静岡県は胃ガン、大腸ガンの発生率が極めて低い。
第二に全国生産の4割を占める茶どころ静岡では、茶をよく飲むだけでなく、茶葉を早めに取り替えては濃い目の茶を飲むことが多い。
この二つの事実の間には、深い相関があるといって間違いないでしょう。
赤ワインをたくさん飲むフランス人には、肉大好きでも心臓病が少ないといういわゆる「フレンチ・パラドックス」が言われてきました。こちらは「ワンダー・オブ・シズオカ(静岡の驚異)」とも言うべきものです。
ウーロン茶は体内の脂肪を溶かすと言われ、そのせいか中国人に肥満はあまり見当たりません。日本の若者がみなウーロン茶のペットボトルを抱えているのを見ると、緑茶のほうが総合力は上だし、おいしいよ、とつぶやくことが多いのですが、焼肉や餃子にはやはりウーロン茶、でしょうかね。
◆苦いタンニンには抗酸化作用が
ところで江戸時代から「宵越しの茶は飲むな」と言われてきました。タンニンが出すぎて体に良くないからというのですが、でも苦いタンニンには抗酸化作用が大きいことを考えると、ほどほどに宵越しの茶を飲むのも案外、健康にいいのかもしれません。
また江戸時代には「茶断ち」という風習がありました。一定期間、茶を断って神仏に家族の健康回復やら目標成就やらを願うわけですが、それほど茶は欠かせぬ存在だったのです。
今では酒断ちはともかく茶断ちくらいなんでもないという人が大半でしょうが、茶断ちに一大決心がいるくらい茶が欠かせない時代がまた来てほしいとつい思ってしまいます。
余談ですが、知り合いの外国人に茶断ちをつたない英語で説明したら、「それと神仏に祈願することとどう関係しているのだ」となかなかわかってもらえませんでした。
一定期間、何かを断って祈願する、というのは欧米的ではないのでしょう。最後にはようやく「アイ・アンダースタンド」と言ってくれましたけれども。
経済倶楽部理事長