◆人間の体重の7割は水
熱中症対策には涼しくして水分を十分に取り休養も十分に、ということが繰り返し言われています。特に高齢者は、暑さへの感度が薄れ、水分への欲求も落ちることが熱中症を引き起こしやすくしているようです。
というわけで、今回は水について考えてみましょう。キリスト教、仏教、神道いずれにおいても、水は神聖かつ重要なものですが、それは水こそ人間の根源だからでしょう。
人間の体重の7割近くが水だそうで、体重60キロの人だと40キロは水分ということになります。地球は「水の惑星」と呼ばれますが、人体も「水の小宇宙」ということでしょうか。
血液もほとんど水分だし、細胞の間を流れる体液も同様です。体内の水分が数パーセント減れば生死にかかわります。
人間は日に1・5〜2リットルの水分を体外に出し、同量を補給しています。さまざまな飲食の水分が大腸で吸収されているのです。
尿や汗などで水分とともに不用物や毒素が排出されるので、水分を十分にとることは体にとって極めて重要な仕事になります。
◆細胞を活性化し、気分を落ち着かせる
水分の働きを健康という点から考えてみると、以下の5点が挙げられます。
(1)利尿作用。排毒が行われる。
(2)下剤作用。十分な水分により便通がうまくいく。
(3)発汗作用。体温の調節という大事な働きのほか排毒も。
(4)希釈効果。塩分が多すぎる場合に薄める。
(5)血液流動化。ドロドロ血液を水分補給で流動化する。
(6)強壮、沈静効果。水分によって体内の化学反応や新陳代謝を促進し、細胞を活性化する一方、水そのものは陰性なので気分を落ち着かせる働きもある。
体にとって水は量も大事ですが、質も劣らず大事です。有害物質で汚染された水は論外であり、大都会の水道水は多量の塩素で減滅菌したり活性炭でろ過されて供給されています。
取水源が汚染されている場合には、残留塩素が多くなりがちで、しっかりした浄化器を使うことが望ましいでしょう。
このため最近はミネラルウォーターがブームです。しかし地方の水道には質の良いものも多いので、何が何でもミネラルウォーターに頼ることはありません。
ただ、カルシウム、マグネシウムなどミネラルを、分子の小さい状態で適度に含んだミネラルウォーターであれば健康に望ましいことは確かです。
ミネラルが多い水を硬水、少ないものを軟水といいますが、日本は軟水が多く、そのため石鹸がよく溶けて洗濯や風呂には適しています。ヨーロッパは硬水が多いのでカルシウム摂取にはいいけれど、東南アジアの硬水は結石になりやすいのが欠点です。
◆日本の伝統食品を支える「名水」
昔から清酒、ビール、豆腐、味噌、醤油、納豆、うどん、そうめんなどの産地の決め手に「名水」が挙げられてきました。旨いコメも良い水が豊富な地域で育っています。
料理で、粗雑な材料や調味料によって作られたものに慣れきってしまうと「こんなものだ」と思ってしまうものですが、同様に、質の悪い水に慣れてしまうと、舌の感覚がまひしてしまいます。
その点、清涼飲料水を日に何リットルも飲み続けることで、良い水への感度が失われるのではないかと心配になります。
ペットボトル症候群も増えています。飲むとのどが渇いてまた飲みたくなる。そのようにして甘味料過多、ミネラル不足による栄養疾患が若者にも多発しているそうです。
良い水の重要性を一度、見つめ直してはどうでしょうか。日本の発酵食品はじめ伝統食品が良い水によって支えられてきたことは、重要な示唆を私たちに与えてくれていると思います。良い水が体内を駆け巡っていると想像するだけでも元気が出てくる気がしませんか?
経済倶楽部理事長