◆「脂」と「油」はどう違う
若い人々は特にそうですけれども、人類は概して油っぽい料理が好きなようです。しかし、油の摂りすぎには用心しなければいけません。ということで、おいしいけれども危ない食材、油について考えてみましょう。
まず脂と油はどう違うのか。これは常温で固体か液体かの差で、すき焼きの残りを翌朝見ると、脂身が白く固まっている。脂(膏)です。
肉の脂と植物油の中間が魚で、「脂の乗ったサンマ」とも言い「油」を使ったりもします。冷たい海に住んでも、魚の脂肪は決して白く固まったりはしません。
動物の脂と魚の油のいちばんの違いは酸の性質です。肉、卵、牛乳は飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸で、面白いことにコメ、チョコレート、砂糖の脂肪も同じ仲間です。
結論的にいうと、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸の摂りすぎは体に良くありません。これらは諸病の根源でもある中性脂肪の値を高め、悪玉コレステロールを増やすので、できることなら控えめにしたいものです。
もちろん肉、牛乳、卵は良質の蛋白源として重要ですが、霜降りやロース、ベーコンなどは控えめにしましょう。おいしいものに落とし穴というのは食の世界の常識です。霜降りなどめったに食べない、心配は無用だ、ですと? 失礼しました。
◆サンマやアジなど青魚で健康に
魚の油が健康に良いことは多言を要しません。特にサンマ、ブリ、サバ、アジ、イワシなど青魚にはαリノレン酸が多く含まれています。
このためDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が豊富で、コレステロールでいえば悪玉は抑制、善玉を増やす働きがあります。
一匹100円前後のサンマやイワシはわが家の夕食を飾る力強い援軍です。魚を焼くと煙で台所、いやキッチンが汚れるというので若い主婦は敬遠しがちだそうですが、せめてサバやイワシの煮物くらい頻繁に調理してほしいものです。
◆摂りすぎは禁物の植物油
さて植物油ですが、ナタネ、大豆、ゴマ、紅花(サフラワー)、コーン、オリーブなどはリノール酸が豊富なのが特徴です。
リノール酸はコレステロール対策に効ありというので、動物性の油を減らし植物性の油を増やすよう、奨励された時期もありました。
しかしその後、否定的な意見が台頭します。一つは植物油にも飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸が多くその害があること、もう一つはリノール酸自体に問題があること、です。
リノール酸は人体に多少は必要ですが、普通なら摂取不足を心配することはありません。むしろリノール酸と脳梗塞、心筋梗塞、ガン、アレルギーなどとの関係が浮かび上がってきました。
ということで植物油も摂りすぎは禁物ですが、シソ油やエゴマ油はαリノレン酸が多いので理想的です。ただし手に入りにくく酸化しやすい欠点があります。
◆野菜は「生」より煮たり蒸したりして
マヨネーズやドレッシングは基本的に油が原材料ですから、リノール酸をたっぷり含んでいます。したがって生野菜や海草サラダを食べるときは、マヨネーズやドレッシングを控えめにするよう、気をつけましょう。
生野菜はビタミンが多いと健康志向の人に人気ですが、煮野菜、蒸し野菜のほうがたくさん食べられてビタミン摂取量はむしろ多くなります。煮たり蒸したりするとビタミンが壊れるという常識は正確ではありません。結構、残ります。
肉や魚も揚げ物を減らし、煮るか焼くか蒸すかして醤油かレモン、香辛料で楽しみましょう。
最後に、バターよりマーガリンが健康的という神話は間違いです。マーガリンと植物油たっぷりのスナック菓子も危ない。ポテトチップスの類を車内で子供が袋を抱えて食べまくっているのを見ると、将来をつい心配してしまいます。油、塩、化学調味料、カロリーが多くて、いいことはほぼゼロです。
経済倶楽部理事長