◆安らかな睡眠をとる条件は?
暑苦しい夏の夜が過ぎて、秋はよく眠れる季節です。ならばなぜ「秋眠暁を覚えず」と言わないのか不思議ですが、まあそれはともかくとして、眠りと健康は深い関係があるということで、今回はその辺を考えてみることにしましょう。
日に8時間寝れば人生の3分の1は寝ていることになります。これだけの時間を気持ち良く健やかに過ごすことは極めて重要なのに、眠いから寝るだけという人がほとんど(たぶん)なのはもったいない話です。
悪夢でも見ない限り、眠りは副交感神経を活発化させて、体をほぐし、神経を休めます。昼間、交感神経が働きずめでストレス一杯の人は特に安らかな睡眠が大事です。
気分良く寝るために必要なことをまず挙げてみましょう。
(1)快適な環境。寝具が清潔で乾燥していて寒からず暑からず。適度な暗さ、静けさも大事です。
(2)寝る前にリラックスして気分良く眠りにつけること。寝る前に喧嘩などしたら最悪です。悩みごとを抱えていない、つまりストレスが解消できているのが望ましい。
(3)寝る前に過度な飲食をしないこと。特にアルコール、冷たいもの、消化の悪いもの、カフェインなどの刺激物を取りすぎると、安眠の妨げになります。
(4)昼間、適度の運動をしておくこと。
(5)寝相も大事。
ということで、最後の(5)つまり寝ているときの姿勢についてちょっと触れてみましょう。
◆「獅子眠」勧める貝原益軒
貝原益軒は『養生訓』の中で、脇を下にして寝ること、いわゆる「獅子眠」を勧め、「仰向いて寝てはいけない。うなされやすい」と言っています。
これは人間の背骨がゆるやかにS字状になっていることと関係しているのかもしれません。
仰向き寝の場合、あまりに柔らかいフカフカの布団だとS字が極端になって良くないし、硬いせんべい布団だと腰のあたりが伸びすぎてS字に負担がかかる。ということでどちらもいけません。
益軒先生は貧乏学者だったはずで、おそらくせんべい布団だったでしょうから、仰向けはつらかったかもしれませんね。
人間は普通ひと晩に数十回寝返りをうつそうですから、あまり気にしないで寝れば自然にいいようになっているはずです。私の場合、眠りに入るまではほとんど仰向けですが、目が覚めると必ず横を向いています(それもなぜか連れ合いに背中を向けていることが多い・・・)。
◆神経を安定にする食事を
ところで不眠症と食事は大いにかかわりがあります。結論的には、神経過敏を緩和し神経を安定にする食事にすることが肝心です。
カルシウム、マグネシウムなどミネラルが不足すると、神経が高ぶって、イライラしがちです。昼間、怒りやすくなった人は概して夜、眠りが浅いのです。
カルシウム補給には海草、小魚、乳製品、ゴマなどが適当で、マグネシウムはといえば海草、ナッツ、豆、穀類などに多く含まれます。
カルシウムとマグネシウムは、両者がそろったときに吸収されやすくなるそうですから、海草をよく食べる人は相乗的に効果が高まっていることになります。
コンブ、ワカメ、ヒジキ、モズク、海苔は良い睡眠の友ということになります。海産物ではカキの効果も絶大です。
不眠症では昔から民間薬でクチナシが有名ですが、地方によってはタマネギや松の実が良いとする民間療法もあります。確かにタマネギに限らずネギ類は神経を落ち着かせる働きがあるのでお勧めです。ただし長ネギは白い部分に限ります。
眠れない夜に寝酒というのは昔からの話で、ウィスキーなどを少量飲むのは眠りを誘う一面があります。しかし、習慣性になっては困るので、よほどのとき「今晩だけ」という固い決意のもとでひと口いただきましょう。
経済倶楽部理事長