◆昼も夜も休まず体内を駆け巡る
ことわざからいきましょう。血のにじむような、血がたぎる、血の気が多い、血のめぐりが悪い、血が騒ぐ、頭に血が上って、血と汗の結晶、血となり肉となる、血も涙も・・。
切りがないのでやめておきますが、わが祖先はそれだけ血を重視してきたのですね。外国語でもたとえばbloodを辞書で見ると、ものすごい数の格言と熟語が並んでいます。
でもその割に、どれだけの人が血の重要性を深く感じているでしょうか。出血多量で死ぬことくらいはわかっていても、日常の生活では血を意識することはほとんどないのでは。
でも昼も夜も心臓から送り出された血は体内を駆け巡っています。臓器や筋肉のように血そのものが痛むこともないので、大事にしようという気にもならず、血のために医者へ行くこともまれです。血液にもし神経があったら悲鳴を上げているかもしれないというのに。
血液には白血球、赤血球、血小板、血漿があって酸素(と二酸化炭素)や栄養素の運搬、食菌、免疫、凝固など多くの役割を果たしている。というのは昔、中学校で学びました。
蛋白質、ホルモン、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を細胞に送り込むことは血液の大事な機能ですが、バランスの崩れた食事ですませているとあちこちに問題が起きます。
皮膚(お肌と言いましょうか)にしても、張りやつやがないといって化粧品にばかり頼るよりも、お肌が喜ぶような栄養素を血液で運んでもらうことが先決でしょう。
◆固める機能と溶かす機能が
血液で極めて大事なことに、血が固まる機能(凝固)と血を溶かす機能(線溶)があります。固まらなければちょっとした出血が命にかかわってしまうし、固まりすぎては血栓が引き起こす梗塞という大問題が生じてしまう。どちらに偏ってもいけません。
血液には凝固と線溶が行き過ぎないための仕組みがあります。インヒビターという凝固や線溶を抑える阻止物質が血液中に存在しているのがそれです。
でもときにインヒビターが働かずに出血や血栓が進んでしまうこともあります。晩年の昭和天皇もそうした状態だったと言われています。
では医師に頼るようになる前、未病と言われる状態で何かできないでしょうか。そのいくつかをご紹介しましょう。
◆青魚・納豆・タマネギを食べよう
血をサラサラにして血栓を防ぐに最適なもの。その一つが青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸です。サンマ、アジ、イワシ、ブリ、鮭、マグロ・・・旬の安いときにたくさん食べたいものです。
納豆のネバネバにも大きな線溶効果があります。日本人によって発見されたナットウキナーゼという酵素です。できれば毎日、食べることをお勧めします。
ただし梗塞の予防に凝固阻止剤としてワーファリンを処方されている人は食べないように言われます。納豆に含まれるビタミンKが凝固阻止を妨げてしまうからです。
ほかにも血液サラサラ、つまり凝固しにくくする食物としては、タマネギやニンニク、キクラゲが知られています。
ところで美原恒宮崎医科大学名誉教授が、焼酎が線溶効果を高めることを以前、突き止めました。ただしホワイトリカーや酎ハイなどの安い甲類焼酎はほとんど効き目がなく、線溶効果は味わい派好みの本格焼酎(乙類)に限るそうです。
というわけで血栓による梗塞を防ぐならちょっと高めの焼酎を奮発してみるのもいいかもしれない。良質の日本酒、ビール、ワインもそこそこ効果があるようなので、飲み過ぎない範囲での晩酌なら奥様への言い訳に十分なるでしょう。
もう一つ大事なのは水分です。水分が少なくなって血がドロドロになると脳血栓、肺血栓の危険が増します。特に明け方が危ないので、寝る前の水分補給を怠らないようにしたいものです。
経済倶楽部理事長