「農政では単純な言葉が先行して話がおかしくなることは何度もあった」。
これまでの農政改革論議でも、副業的農家、小農切り捨てなど、行政の真意とは異なる言葉が一人歩きして「理解を得るのに苦労したことも」と振り返る。このところの農政改革をめぐっても「生産調整の廃止、選択制というショッキングな言葉だけが先行、みんな動揺しているのではないか」と指摘。「しかし、大臣から(選択制など)聞いたことがない」ときっぱり。「答えが決まっていて都合よくつなぎ合わせるような検討をしているわけではない」。
そのうえで今回の改革は「基本は生産調整にまじめに取り組んでおられる人に報いたいという気持ち」と話す。その政策が水田フル活用であり、総理の施政方針演説にも明確に盛り込まれたことを指摘する。
「三行半(みくだりはん)じゃないが、今まで(施政方針演説での)農政は3行半ぐらいだったのにあの分量。総理自身が農政に関心があることの証左だ」と政府全体の取り組みであることを強調する。水田フル活用は麦、大豆の不適地で無理に生産するのではなく「本当に社会に役立つものを力いっぱい作ってお金にする。それが本道でしょう」。
しかし、これに続いて「ただし」と言葉が付け加わるのは、大臣をはじめ今回の改革論議で共通することだ。
「担い手は高齢化し、耕作放棄地も増えている。これから農業をやってくれる人がいなければ本当のフル活用にならない。それを実現するための手立てとは何か、合わせて検討する必要がある」と担い手対策の重要性も説く。そのために生産調整のあり方についても、「主義、主張の議論をしていても仕方がない。もっと実践的に」との方向で省内でも検討しているという。一方で審議会や6大臣会合、そして与党でも議論が進む。
「船頭が多くなって大変でしょう、とみなさんは思うかもしれないが、なかなかこんなチャンスはない。苦労のしがいがある、といったところかな」。その舵取りに期待がかかる。